Column2016/12/8

【Column-028】 [光り輝く街で-17]  『直近の未来』

 

右足小指骨折から復帰して2戦目のアウエ戦。細貝萌は80分から途中出場を果たした。復帰初戦の前節・ニュルンベルク戦は86分からの出場だったから、僅かに出場時間は伸びた。チームはアウェーで4-0。これでブラウンシュヴァイクを抜いてブンデスリーガ2部の首位に立った。だが今の細貝は、身の引き締まる思いでいる。

 

「アウエ戦で先発じゃないことは、今週のセットプレーの練習をした時から分かっていたよ。小指はまだ痛いけど、もうプレーに支障はないから、今後も試合出場できるように頑張るしかないよね。またチームは4-0で勝ったけど、ニュースで報じられているように大勝、快勝という試合内容じゃなかった。もちろんチャンスを決め切ったから4点取れたわけだけど、ボールポゼッションは30%台だったし、シュトゥットガルトのシュートは6本で4得点、相手は15本で0点だった。効率良く得点して、こういう難しい試合で勝つのは重要な事なので、その点はポジティブに捉えているけど、それでも試合内容を向上させる努力はチーム全体でしていかなきゃならない」

 

 細貝は前節のニュルンベルク戦で戦線復帰した後に体調不良に陥った。突然吐き気が襲い、約2日間寝込んでしまっていたのだ。実は、クラブ内で細貝と同じ症状を訴えた選手が数人いて、その中のひとりには浅野拓磨もいた。おそらくチーム全体で食事したもので食当たりを起こしてしまったのだろう。ただ、数日間の療養の後、細貝はアウエ戦前にコンディションを取り戻すことができた。

 

「今はもう腹痛の影響はない。ただ、怪我をしていた期間プラス今回の体調不良で体重も3キロ近く落ちてしまった。自分は普段からたくさん食べないとすぐに体重が落ちてしまう体質なので、今後はとにかく食べてベストの体重に戻さなきゃならない。その点では、今は妻と子どもが傍に居てくれるのでとても助かっている。ひとりで外食をしなきゃいけない環境だと、なかなかコンディションを取り戻すことができないからね」

 小指骨折からリハビリを重ね、戦線に復帰するまでの過程にはいくつかの悩みがあった。負傷した箇所以外の部位に負担が生じたのはその一端だ。腿の張りを覚えて復帰時期を変更したこともあった。しかし、最近は身体の状況が改善しているという。

「もちろん疲れはあるけど、腿の張りなどの違和感はもう無くなった。自分の中ではだんだんトップフォームに戻ってきている間隔がある。だから、とにかく試合に出たい気持ちもある。でも、そこは監督としっかりコミュニケーションをとっていかなきゃいけないと思うし、まずは今年残り2試合、しっかりチームに貢献することだけを考える」

 ドイツ・ブンデスリーガは12月下旬から1月下旬まで約1か月間の中断期間を設けている。実質的には約2週間のオフで、その後チームは再開に向けてミニキャンプを張るのが常だ。これまでの細貝は中断時期にある程度しっかり休養してシーズン中盤から終盤の戦いに備えることが多かった。しかし今季の彼は、すでに腿の肉離れで約4週間、そして小指骨折で約5週間離脱し、その間はリハビリメニューを強いられていた。チームと一緒に通常練習をこなすことができず、公式戦への出場時間も短かかった点は留意しなければならない。

「これまではシーズンをフルに戦い切るために休養する時間も必要だった。でも今季は試合出場数が少ない。その点では中断期間中でも、ある程度身体を動かし続けなきゃいけないと思っている」

 それでも今の細貝は前向きだ。

「今季はケガをしていた時期が長かったこともあって、あっという間に前半戦が終わってしまう感覚がある。でも、ケガをしていない時期は全ての試合に出場できているし、プレーパフォーマンスも良かったと自覚している。ブンデスリーガは冬に一旦中断するから、ここでもう一度心身をリフレッシュさせる時間が取れる。この時期を有意義に使うためにも、今年の残り2試合に全力で向かいたい」

 

 細貝は先週よりも明るい声のトーンでそう言い、直近の未来を見据えた。