Column2017/02/3

【Column-034】 [光り輝く街で-23]  『雌伏』

 

 ドイツ・ブンデスリーガ2部のウインターブレイクが明けてリーグ戦が再開された。VfBシュトゥットガルトはアウェーでザンクト・パウリと対戦し、拮抗した展開の中で84分に交代出場のカルロス・マネが決勝ゴールを挙げて辛勝を果たした。

 細貝萌はベンチ入りメンバーから外れ、ザンクト・パウリの本拠地があるハンブルクへ帯同しなかった。試合当日はクラブハウスで試合の様子をテレビ観戦しようとしたが、他にチームメイトがおらず手持ち無沙汰だったために自宅へ帰った。自宅は現在トラブルでブンデスリーガ2部の試合を視聴できないため、彼はインターネットで試合の状況を追い、チームの勝利を知ったのだった。

 

「ポルトガルキャンプの時から自分が控えチームのセンターバックで起用されている状況だったので、再開戦のメンバーに入るのは厳しいかなと感じていた。ヴォルフ監督からは、『今は体調を整えることを優先してくれ』とも言われたしね。もちろん悔しい思いはあるし、チームに貢献できない自分の不甲斐なさも感じている。今季はすでに3度も負傷して戦線を離脱しているし、その点はコンディションを維持することが今の自分の使命だということも理解している」

 細貝は、これまでもチーム内で厳しい境遇に立ち、その都度乗り越えてきた経験がある。直近ではヘルタ・ベルリンのパル・ダルダイ監督から構想外とされて練習への参加も制限されたが、トルコへのレンタル移籍を経て再びドイツの舞台に戻ってきた。トルコでは所属先のブルサスポルが成績不振で3度の監督交代を実行する中で、細貝はいつでも最終的に新指揮官の信頼を得てピッチへ立ち続けた。その役割はダブルボランチの一角、アンカー、サイドバックと様々に変化したが、多様なスキルを備える細貝にとってはむしろユーティリティ性が武器となり、チームのウィークポイントを埋める重要な選手として認識された。

 

 今のシュトゥットガルトではハネス・ヴォルフ監督がチーム編成上の都合で細貝をアンカーからセンターバックへコンバートしている。4バックのセンターで守備の要を務めるには高いフィジカルを必要とされるが、ヘルタ・ベルリンでヨス・ルフカイ監督が率いていた時代にセンターバックを務めた経験がある細貝には確固たる自信がある。

「最後尾でチームをコントロールして最後の防波堤になる仕事はやり甲斐がある。今は『センターバックでプレーしろ』と言われても高いモチベーションを保てるよ。ただ、そのためにはトップチームで公式戦に出場しなければならない。でも今の自分はまだ、その立場を確立できていない」

 

 シュトゥットガルトは今節でザンクト・パウリに勝利したことでハノーファー、ブラウンシュヴァイクと同勝ち点の3位を堅持している。1年での1部昇格を使命とするクラブとしては最低限でも自動昇格権を与えられる2位以内に入らねばならない。今季途中から指揮を執るヴォルフ監督は課せられた責務の遂行と自らのステップアップを目論んで、これからも様々なチーム改革を実行するだろう。特にヴォルフ監督は若く将来性のある選手を抜擢する傾向がある。イングランド・プレミアリーグのアーセナルから期限付き移籍中の浅野拓磨をザンクト・パウリ戦でフル出場させたのも、その一環だろう。また浅野と同じくスピードに定評のあるマネは今回スタメン出場こそ逃したが、後半開始から途中出場して決勝点をマークし、指揮官に自らの力を誇示した。そして現在アンカーのレギュラーでプレーするのは24歳のマティアス・ツィマーマンで、最近は細貝に代わって彼がファーストチョイスを務めてきた。しかしヴォルフ監督はポルトガルキャンプ中にスイス人MFで20歳のアント・ギルキックの能力を見初め、ザンクト・パウリ戦では前半の31分に故障したツィマーマンを下げてギルキックを投入している。


 

 そして最近チームはボランチ、左サイドを戦場とする若い選手も獲得した。年齢的にチームの中核に捉えられる細貝はツィマーマンやギルキック、そして新加入選手にはない経験や実績を生かし、チーム全体に波及させられる安定感で勝負するべきだろう。特にリーグ終盤の昇格争いが佳境を迎えた時は、アウグスブルク在籍時代に1部昇格を経験している細貝の力が必ず必要になるはずだ。

 細貝は再びチームから自らの力を請われる時を信じて、今は静かに、それでも内面に炎を燃やしながら準備を重ねている。

 

 

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