Column2017/04/4

【Column-039】 [太陽の下で-02] 『Jのピッチに立つ』

 

 2017年3月24日にVfBシュトゥットガルトから柏レイソルへの完全移籍を発表した細貝萌は、チーム加入からわずか6日後に予定されたJリーグ第5節・サンフレッチェ広島戦の帯同メンバーに入った。

「もちろん広島戦に出る準備はしていた。例えば、今の柏はセットプレーをゾーンで守っているので、各選手役割がある。そこで事前にチームから、『もし試合に出場したら、ここで守ってほしい』という約束事なども伝えられていた。だから試合出場の可能性はあるのかなとは思っていたんだよね。でも、まだチームに合流して5日で、練習の段階ですでにスタメンから出場することはないと分かっていた。ただ、広島戦は試合開始直後に先制したので、逆に自分の出番が訪れる展開になるのかなとは思っていた」

 試合は柏が大谷秀和の見事なミドルシュートで先制し、ホームの広島を抑え込む展開が続いた。そしてこれまでのゲームでなかなか機能しなかった守備も、チーム全体が強い意識付けで相手ボールホルダーへアプローチして相手の攻撃を無効化させることに成功した。

 

「聞いた話では、今季のゲームで最も内容の良いプレーを見せられたみたいだね。広島に自由を与えなかったし、攻撃面でも良い形が何度もあった」

 

 1-0で推移する試合の中で、細貝はピッチ脇のウォーミングアップゾーンで下平隆宏監督から声が掛かるの待ったが、その出場機会はなかなか訪れなかった。

「各新聞でも色々書かれていたみたいだけど、僕は別に出場機会を求めて柏を選んだんじゃないんだよね。ここに来たからといって、すぐに試合に出られるなんて甘い考えは最初から抱いていない。どんなチームでも仲間との競争に勝って、試合出場するチャンスを掴み取らなきゃいけない」

 76分、ディエゴ・オリヴェイラのPKで追加点を挙げた柏は逃げ切り態勢に入った。そして試合終了間際の87分、細貝はようやく3人目の交代で試合に出る資格を与えられた。

「7年ぶりのJリーグ出場だったけど、それほど感慨はない。むしろ3連敗していたチームが良い内容で勝利できたことの方が大きい。自分が柏に来たことで若い選手が、『細貝には負けられない』と思ってくれて、それが全体のプレーの向上に繋がれば、それはチームにとってとても良いことだと思っている。そういった効果って目には見えづらいけど、すごく大切なことだからね。それに僕はもうそういう年齢だから、チーム内での役割も考えているつもり。ピッチ内だけじゃなく、様々な面でチームに効果を与える。それも今の自分の仕事だから」

 

 広島戦で勝利した当日、チームは夜遅くに柏へ戻り、翌日には試合出場が無かった選手や出場時間が限られた選手で構成されたメンバーが町田ゼルビアとの練習試合を行った。

 

「僕は町田との練習試合で60分間出場したけど、プレーの感覚で言えば、まあまあ良かったと思う。ただ、練習試合が終わって帰ってきたら、結構疲れてたね。それに、この練習での意味合いは正直言ってコンディション調整にある。相手の状況もあるし、リーグ戦などはもっとハードになるだろうからね。この練習試合ではケガをしないように気をつけた。日本とドイツではピッチ状況が全く違うんだよね。日本のピッチはとても硬く、ドイツは芝が深くてもっと柔らかい。その分、足に掛かる負荷もかなり違うので慎重にプレーしなきゃいけないと思った。去年は接触プレーだったにしろ、ドイツで2度も負傷しているから。その点では手を抜くという意味ではなく、自らを制御する必要もあるのかなと。移籍したばかりでまたケガをしてしまったら、チームに大変な迷惑をかけてしまうからね。正直言ってケガをしてしまうのは仕方ない部分もあるけど、勿体無いケガだけはしたくないから」

 

 今の細貝は充実感に満ち溢れているようだ。チーム加入後間もないのに、チーム状態を見極め、課題や修正点、そして特長を把握しつつある。

 

「もうチームメイトの特徴なども掴み始めているよ。『各選手のストロングポイント』や『各選手の精神的な部分』、それぞれの個性がもう分かってきた。まだ柏に来てから1週間程度しか過ごしていないんだけど、何か、もっと長くこのチームの一員でいるような感覚もある。もちろんドイツとは違って、柏では母国語である日本語でコミュニケーションが取れるアドバンテージもあると思う。ただ、それよりも今の柏というクラブ、チームが自分にとってプレーし甲斐のある場所なんだと感じている。今はとてもポジティブに物事を捉えられているよ。だからこそ、できるだけ良い形でピッチに立って、自分の力をチームに還元させて勝利に貢献したい。まずはサポーターに自己の存在を認めてもらいたいからね」

 

 小さいながらも意味のある一歩。少なくとも黄色と黒のユニホームを着て公式戦のピッチに立てた事実は大きい。

 細貝萌の新たなる挑戦はまだ、スタートしたばかりだ。

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