Column2017/05/8

【Column-043】 [太陽の下で-06] 『クローザーとは?』

 

 Jリーグ第10節。柏レイソルはセレッソ大阪に1−0で勝利してリーグ戦4連勝を果たした。これで柏は、首位・鹿島アントラーズと勝ち点3差の4位へランクアップしてタイトル争いに参入してきた。  

 細貝萌が柏へ加入してから、チームはリーグ戦で4勝1敗の好成績を残している。これについて、本人はどう感じているのだろう。

「ここまでの結果を見れば、当然チームはある程度評価されていいと思う。実際にプレーしている側から見ると、勝利できている理由をひとつだけ挙げるのは難しいけども、良い方向に向かっているのは間違いない。その原動力のひとつに柏サポーターの存在があるのも大きいと僕は感じている。先日のセレッソ戦に関しては、前半はあまり内容が良くなかったけども、辛抱強く戦うことで勝ち点3を取れたと思う。チャンスはあまり築けなかったと思うけど、我慢を重ねることでゴールが生まれる余地も生まれる。それでもゴールはゴールだからね。流れが悪い時に崩れることなく戦えていることはポジティブに捉えられるよね」 

 

 リーグ戦での細貝は、敗戦を喫した第6節の清水エスパルス戦で不出場に終わった以外はすべて後半途中から出場している。ボランチポジションの選手が後半途中にピッチへ立つ意味。それは得点を求められる前線の攻撃的な選手と比べると、かなりの差異がある。30歳の彼は今、自らに与えられるタスクを深く熟考して、忠実に実行しようとしている。


「周りは今の僕の役割を『クローザー』と評するよね。それが日本での呼び名なのかな?(笑)クローザーと言ってもここ数試合、僕がピッチに立った時のシチュエーションは試合毎に必ず違う。例えば第7節のヴィッセル神戸戦は同点の状況で、他の試合はリードしている時に僕はピッチに立った。その際、対戦相手の陣容は必ず違うし、相手選手も、そして各チームの戦術も違う。そして各試合で僕が出場する時間帯も違うわけだよね。そうなれば当然僕が実行すべき役割やプレー判断にも変化が生じる」

 

 細貝が考えるプレーディティールは興味深い。これは長年プロサッカー選手としてプレーしてきた者しか携えられない、熟練した思考なのかもしれない。彼は、その考えの一端を明かしてくれた。

 

「セレッソ戦では1−0で勝っている状況で約20分間プレーした。この時間帯はもちろん、しっかり守ってゼロで終わろうという共通認識だよね。だけどその中で、僕のようなタイプのボランチの選手と、その他のポジションの選手とではプレー選択が異なることもある。具体的な例を挙げると、例えばこの試合では左サイドで自分がボール受けた時にワンタッチでボールを戻し、そのまま前へ走れば少しでも高い位置でボールを受けられるようなシーンがあった。普段の状況なら、僕はそのプレー選択をしていたと思う。もしかしたら、そこで僕がアクションを起こしたことで前線に繋げてゴールできるかもしれなかったからね。でも1−0でリードしている流れの中で、そのプレー選択をするのはどうなのかと思った。当然セレッソはパワープレー気味に仕掛けてきていて、何としても同点に追いつきたいと思っていた。前線にはクニ君(関口)、(柿谷)曜一朗、キヨ(清武弘嗣)、(山口)蛍、杉本(健勇)くんなど、いつ得点してもおかしくない素晴らしいタレントがいる中で、ボランチの自分がわざわざアクションを起こす必要性があるのか。それに、もし僕が前へ走ったところでボールを奪われたら、結果的に守備組織が崩れて相手に得点チャンスを与えてしまうかもしれない。結局、このシーンではワンタッチでボールをはたかずに前へ走ることを躊躇したんだけど、その結果僕自身が相手にボールを奪われてしまった。その意味では自分のプレーパフォーマンスは良くなかったと反省している。それでも自分はチームの勝利を逆算したプレー判断をできる選手になりたい。こういった、『クローザー』という立場で出場する場合は特にね」

 

細貝は『クローザー』という言葉で一括りにされることを良しとしていないのかもしれない。毎試合、常に同じ役割を求められているとは考えない。サッカーはそれだけ奥深く、緻密なものだ。それを理解する選手がピッチに立った時、チーム状況が劇的に変化するのも道理だろう。

 柏はGK中村航輔のビッグセーブなどで窮地を脱して勝利したが、その影では細貝が施したリスクマネジメントもあった。一方、細貝がこれまで先発でピッチに立った2試合、ルヴァンカップの大宮アルディージャ戦は0−0のドロー、そしてジュビロ磐田戦は1−2で、まだ勝ち星を挙げられていない。当然レギュラーとしてピッチに立つことを視野に入れる細貝は、貴重なアピール機会であるルヴァンカップに最大限注力するつもりでいる。

 

 「セレッソ戦から中3日で行われるルヴァンカップのベガルタ仙台戦はもちろんベストを尽くす。最近はコンスタントに試合出場することで体調も整ってきたし、過密日程の中でもプレーできる自信はある。また、日本はだんだん暑くなってきたね。ヨーロッパとはまったく異なる夏の厳しさをどう乗り越えるかも重要な課題だと思う。リーグ戦はまだ前半戦だから順位はそれほど気にしていないけど、どれだけ上位をキープして集団に食らいつけるかが今後の鍵になると思う。自分は、自らに与えられた役割を着実にこなしていく。サポーターの力を借り、全力で闘いたいと思っている」

 

少しの手応えと、まだまだ克服しなければならないタスクの両輪を抱えながら、柏と細貝の夏がやってくる。
 

 

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