Column2017/06/30

【Column-047】 [太陽の下で-10] 『苦境』

 

 2017年6月25日のJリーグ第16節。ホーム・日立台に立った柏レイソルはコンサドーレ札幌に2−1で勝利して首位を堅持した。下平隆宏監督はシーズン当初のチーム目標を上方修正し、ターゲットをリーグ制覇に定めた。それは今のチーム状況を端的に示している。若手の台頭とチーム戦術の昇華。第15節のヴァンフォーレ甲府戦で引き分けて連勝は8で止まったが、札幌に勝ったことで再び自信を深め、リーグトップのプレッシャーに動じない所作には逞しさがある。

 

 チームの中軸も安定してきた。クリスティアーノ、武富孝介、伊東純也の前線が猛威を振るい、トップ下の中川寛斗が相手ゴール前へ飛び込む。キャプテン・大谷秀和がチームを引き締め、柏ユース出身の手塚康平が卓越したテクニックで中盤をオーガナイズする。中山雄太と中谷進之介のセンターは盤石で、輪湖直樹と小池龍太の両サイドバックが運動量豊富に駆け回る。そして最後尾には日本代表にも選出された守護神・中村航輔が鎮座する。ハモン・ロペスやディエゴ・オリベイラの両外国籍選手がベンチに回る状況の中、柏のサッカーが日々進化を続けている。

 

 細貝萌は、そんなチームの勢いに乗れないでいる。札幌戦は前節の甲府戦に続いてベンチ入りも不出場に終わった。チームは韓国代表サイドバックのユン・ソギョンを獲得し、彼を途中出場させる采配策を採ることで細貝の出場機会が失われている。もとより、今のチームは攻撃的に戦うスタイルを徹底させていて、下平監督が採る策はディエゴ・オリベイラ、大津祐樹らのFWの途中投入が常だ。また試合展開も相手の猛攻を懸命に凌いで勝利を果たすような形にはならず、ボランチである細貝の求められる役割を発揮する状況になっていない。

 

 また細貝は6月上旬の国際Aマッチウィークの時期に左太もも前の違和感を覚えて別メニュー調整をしていた。ドイツでのプレーからオフ期間を経ずにJリーグへ復帰したことでコンディション維持に苦慮した事情もあり、監督、コーチングスタッフ、チームドクターらとディスカッションした上で心身のリフレッシュを図ることを決断した事情もあった。ただその結果、細貝のフィジカルは回復に向かい、現在はフルパワーで稼働できる実感を得ている。それなのに今の境遇は上昇曲線を描くチーム状況と真逆のベクトルへ向かっている。

 

「物事をポジティブに捉える。これが自分が常に備える気持ち。ただ、現状を認識して改善を図る努力も怠ってはならない。今の自分の状況に対して『ポジティブに考えている』と言っても、それはただの強がりに思われるかもしれないよね。今の心境をどう説明していいか分からないけど、少なくとも個人的には当然満足はしていないよ。でも、何度も言うようにまずはチームの成績が良いことが重要で、その仲間の一員であることに誇りを持っている。それでも僕はプロサッカー選手。自分の力がチームに還元されない状況を甘んじて受け入れ続けるわけにはいかないから、何とか自分の立場、状況を変えて、今の柏のサッカーに合わせていかないといけないよね。その為の努力をしていかないと」

 

 ドイツから日本へ戻った時に抱いた不退転の決意は揺るがない。今の柏は成長の途上で、シーズンはまだ中盤の時期に差し掛かったばかりだ。2位・セレッソ大阪との勝ち点差は2、3位・鹿島アントラーズとは勝ち点3差と、アドバンテージは僅かしかない。これから訪れる日本の夏は灼熱の様相を呈する。厳しい試合展開の中で追い詰められる状況は必ず訪れる。そこで如何にチームの力となり、結果を導けるか。今の細貝がすべきことは自らのステイタスを高めるだけではない。2011シーズン以来6年ぶりのリーグタイトル奪還に向けて、細貝に与えられる責務は多大だ。

 

 長く険しい道を進む中で一筋の光明を見出す。あくまでも前向きに、彼はその先の一点を見つめている。

 

 

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