Column2017/12/26

【Column-054】 [太陽の下で-17]『2017シーズン』

 

 柏レイソルは天皇杯準決勝で延長戦の末に横浜F・マリノスに敗れた。その結果、柏の2017シーズンが終了した。Jリーグの最終順位は4位、YBCルヴァンカップはグループステージで敗退したが、天皇杯は元日の決勝まであと一歩まで迫った。しかし、柏が来季のAFCアジア・チャンピオンズリーグの出場権を得るには天皇杯決勝に進出したリーグ2位のセレッソ大阪が横浜FMを破った上でリーグ4位での繰り上がりを待つしかない。柏にとっては自らの活動が終了した後も一進一退の状況が続いている。

 

 そして柏に所属する細貝萌も今、シーズンを振り返りながら様々な思いを巡らせている。相次いだ負傷、限られた出場機会……。何より、自らの力をチームに還元し切れなかった自らの不甲斐なさを悔いている。

 

「サッカー選手としてプレーしてきた中で、今シーズンはここ数年の中でも個人的には一番厳しかった。ドイツから日本へ帰ってきて柏でプレーしている間は、もちろん充実感もあったけれども、同じくらい葛藤もあった。ドイツやトルコのような異国でプレーしているときは母国語を話せないジレンマの中で懸命に戦っていたけども、柏ではチームスタッフやほとんどのチームメイトなどと日本語でコミュニケーションを取れて、そのような障害がなくなった。つまり誰がどう考えても恵まれた環境だったわけだけど、それなのに、自分自身は満足いくシーズンにできなかった」

 

2017シーズンの細貝は身体、メンタルの両面で多大な負荷が生じた。ドイツ・ブンデスリーガ2部(現・1部)のシュトゥットガルトに在籍していたときから抱えていたケガに加え、柏に移籍してからは他の箇所にもダメージが及んで度々戦線離脱を強いられ、全体トレーニングに加われずにリハビリに明け暮れた時期もあった。チームが躍進する中でプレー機会が与えられない時間が続くと、コンディションを上げるのに苦労し、本職のボランチだけでなくセンターバック、サイドバックなどでも試されたが、結局ピッチに立つ機会は限られた。

 

「反省ばかりしてしまう。もっと様々なことに挑戦しなくてはいけなかったとか、ある試合のプレーではこうすべきだったとか……。それでも今は自分がどんな境遇で、どんな精神状態で来季に臨まなきゃならないかを自覚できた。厳しい状況なのは自分が一番理解しているつもり。今は、この立場からどんなふうに這い上がっていこうかという思いのほうが強い」

 

約6年の間ヨーロッパでプレーし、今年久しぶりに日本でサッカーをプレーした細貝にとって、そのプレー環境は困難なものだった。

 

「日本のサッカーは……、難しかった。馴染めばできると思ったけれども、柏のサッカーに馴染みきれなかった。それは試合に出場できていないことを見れば分かる。かつて代表や浦和で良いプレーができたときの自分に戻れていない。今は全然自らの力を発揮できていないのが現実。それは自身のコンディションの問題もあり、チームの戦術の問題もある。そこはしっかりと自分の中で判断して改善していかなきゃならない」

 

 浦和でプレーしていたときと今の柏とでは細貝自身の立場も異なる。前橋育英高校から新卒で浦和へ加入した当時の彼は一介の若手選手で、周囲には頼れる先輩選手たちがいた。しかし今年31歳を迎えた今の彼はヨーロッパで確かな経験と実績を積んだベテラン選手で、チームメイトを支え、自らもチームのために尽力すべき役割へと変化している。

 

「年齢を重ねたことで、その経験をチームに還元しなきゃならないとは今でも思っている。若手選手から何か相談を受けたら遠慮なく助言もしているし、そのスタンスは変わらない。ただ、浦和時代は自分が先輩に頼る側だったものが、今の柏では逆に相談される側になった。それは自分の中で自覚して消化しなきゃならない。そして、もちろん今の役割を理解しながら、それでもチームの一選手だという自覚を持って、あくまでも選手としてどれだけ貢献できるかを第一に考えたい」

 

まずはドイツ時代から約1年半の間、オフ期間もなく走り続けた心身をリフレッシュさせなければならない。Jリーグクラブの大半は来年1月の半ばに強化キャンプなどを張り、2月中旬のACL、もしくは月末に開幕する予定のJリーグへ向けて始動する。

 

「一歩でも先に、ひとつでも前に。着実に、それでもしっかりと歩を進めたい」

 

苦難の2017年が終わり、また、新たなシーズンが始まる。

 

(了)