Column2019/05/28

【Column-069】 [微笑みの国で-06]『タイサッカーの発展を願って』

 

ブリーラム・ユナイテッドはAFCアジア・チャンピオンズリーグ・グループステージ最終節をアウェーの韓国で戦い、全北現代に0-0の引き分け。これでグループステージ6試合を1勝1分4敗の成績で終え、勝ち点4でグループステージ4位となって決勝トーナメント進出の夢が途絶えた。

シーズン開始間際のコンディション不良でブリーラムのACL登録メンバーに入らなかった細貝萌は、チームメイトの戦いについてこんな主観を述べている。
「実際に自分がACLで戦っていないから上手くは表現できないんだけど、今のブリーラムは若い選手が多くて、ACLでは『良い経験をした」という思いだけで終わってしまっているような雰囲気になってしまっているようにも見える。例えばタイはヨーロッパのプレミアリーグやリーガ・エスパニョーラ、ブンデスリーガ、それに日本のJリーグに対しても関心が高いけど、自国のリーグであるタイ・リーグ1にはまだまだ興味が薄い。それはタイのサッカーの歴史にも関連しているんだと思うけど、やっぱりまだ、この国のサッカーファンは海外のサッカーに憧れがあって、自国のサッカーの実力を懐疑的に見ているのかもしれない。だからACLでも、韓国や日本のクラブに対して『絶対に負けられない』といった感情が本気で伝わってこない部分があるように思うんだよね。それは日本人選手の僕からすると少しギャップを感じる」

 

ブリーラムで国内リーグを戦っていると、ファンやサポーターたちのことも気になる。
「タイのファン、サポーターはそれほど過激じゃないように思う。ブリーラムに関しては、ACLは敗退してしまったけれども、リーグ戦では9戦して無敗だからかブーイングが起きたりするような状況でもない。もちろんこれは良いことでもある。他にも普段の観客数も多くなくて、ゴール裏の席も空いてしまっている。でも、それは、このリーグで戦う選手たちがもっと、サッカーが魅力的なものであることを伝えなきゃいけないことの表れでもある。タイの方々にもっともっと応援してもらえるように、僕らはプレーで示さなきゃならない」

 

タイでの生活も約4か月が過ぎた。高温多湿の東南アジアで、細貝は心の平穏を抱き始めている。
「もちろん、こっちは暑いよ(笑)。でも、生活をする分には何の不自由もない。ブリーラムはタイの首都のバンコクから飛行機で1時間、車だと5時間くらいはかかるところにある田舎町だけど、サッカーに集中するという意味では快適な街でもある。最近のタイは乾季から雨季に変わって雲が垂れ込めることも多くなってきた。夕方くらいになると激しいスコールに見舞われることもあるね。でも、それでも日中は35度前後あって暑いのは変わらない。雨になったらどうするか? いや、特に(笑)。でも、試合中に大雨が降ってきた時はどうなるんだろうとか、プレー面で気をつける部分があるかなどは考えているね。結局サッカーのことになってしまうけど」

ドイツ・ブンデスリーガ、そして日本へ戻ってからの雌伏の時代を経て、今の細貝はブリーラム・ユナイテッドというチームで常時試合出場を果たし、このチームの中心として戦えることの充実感を抱き始めている。サッカー選手にとって何より大切なのは、試合という機会を与えられる場だ。その意味において、細貝は今、この東南アジアの地に赴いたことの意味と、その意義を深く認識している。
(了)