Column2017/05/2

【Column-042】 [太陽の下で-05] 『順応する』

 

細貝が柏に来てから1か月以上が経過した。チーム内でのコミュニケーションは日毎に深まっている。

 

「ここはドイツとは違って日本語で会話できるから、その点のストレスはまったくないよ。それに今の柏レイソルは間違いなく良い方向へ向かっている。リーグ戦で清水エスパルスには敗戦したけど、ルヴァンカップを含めて広島、神戸、大宮、横浜、新潟戦を4勝1分で乗り切った。ただ僕が先発したのはルヴァンカップの大宮戦だけで、まだチームへの貢献はあまり果たせていないんだけどね」  

 

 

それでも細貝萌に焦りは見られない。ヨーロッパから日本への帰還してからは順応する時間が必要であることを最初から理解していたし、キャンプを経ずに途中からチームに合流すれば当然スタメン争いを勝ち抜かねばならないことも承知していた。 

 

「柏に加入してからは途中出場が多くて、その辺りを懸念している人もいるかもしれない。でも、自分は今の状況を凄くポジティブに捉えている。最初から試合に出られるなんて思っていなかったしね。実際に今のチームは各選手のプレーパフォーマンスも良く、それが結果に繋がっている。例えばタニくん(大谷秀和)と(手塚)康平のボランチコンビは素晴らしい働きをしている。新潟戦では康平の直接FKが決勝点になったし、本当に嬉しいよ」  

 

 

細貝がチームに合流した当時の柏は勝ち点を積み上げられずに低迷していたが、この1か月は着実に勝利を重ねている。この間、細貝自身はチーム内の雰囲気の変化を感じていたという。

 

「最初に柏へ来て感じたのは、ガツガツした闘争心が少し足りないということ。でも今のチームはしぶとく粘り強く戦って、球際での勝負では引かず、たとえ1点しか取れなくてもそれを守りきる気迫を漲らせている。それが結果に繋がっているのは間違いない。僕も今は皆から毎日色々な事を学んでいるし、もっと学ばなければいけない」 

 

数日前にドイツ・ブンデスリーガ1部のバイエルン・ミュンヘンが5連覇を達成した。バイエルンはヨーロッパ屈指の強豪クラブで、ドイツ国内では他の追随を許さない文字通りのビッグクラブだ。一方、日本のJリーグではまだ純然たる常勝クラブは存在していない。ドイツと日本との違いについて、細貝はどう感じているのだろう。

 

「バイエルンはブンデスリーガでも抜きん出た存在。結果を見ても分かるようにね。例えば(香川)真司が在籍するドルトムントも強豪だけど、それでもバイエルンとは少し差があるように見えるよね。実際にドルトムントに所属している選手もバイエルンへ移籍してステップアップしたいと思っているわけだから。一方で今のJリーグは、どこのチームにも優勝するチャンスがあると思う。もちろん、その中でも浦和レッズのように素晴らしい選手達が集まって、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が長く指揮を執って成熟してきた素晴らしいチームもある。でも、その浦和も昨日の『さいたまダービー』では大宮アルディージャに敗戦した。実際に、浦和は毎年優勝候補と言われてきて、それでもリーグタイトルを逃してしまっている。今のJリーグに絶対的存在のチームはまだないと思う。とは言え、僕は浦和にお世話になったからわかるんだよね。浦和は間違いなく優勝候補。でも、僕たち柏にも十分リーグ戦で上位を狙っていくチャンスはあると思っている」

 

その中で、現状で自身がなかなかスタメン出場できない状況をどう捉えているのだろうか。

 

「僕はプロサッカー選手だから当然試合に出たい欲求は強い。ただ、それでも焦りは禁物だと思っている。今の自分のイメージでは夏場もひとつの勝負時期だと思っている。それまでにヨーロッパとは異なる日本の環境に完全に順応しなきゃならない。例えば日本の芝はドイツに比べてとても硬いから、油断をすると深刻なケガに繋がる恐れもある。でもそれを意識しすぎると、今度は逆にコンディションがなかなか上がっていかない。ピッチ状況については慎重に自分の身体を慣らさないといけないよね。また日本の夏の気候は要注意だよね。僕は元々ドイツへ行く前にJリーグでプレーした経験もあって、当然日本の夏の暑さを知っているけど、5年以上日本を離れてヨーロッパでプレーしていたから身体が皆と同じスピードでしっかり対応できるかは分からない。自分は暑さを苦にしたことはそれほどない方だけど、久しぶりに日本の夏の湿気や気温を体感したらどうなるのか。今は、その気候で戦えるだけの体力とコンディションを今から整えたいと思っている」

 

柏は5月に入ってからリーグ戦とルヴァンカップの予選リーグを戦う過密日程に突入している。

 

「ルヴァンカップは普段試合出場が限られている選手にとって重要なアピールの場になるから、僕のような状況の選手はむしろ、週2試合の日程は歓迎すべきだと思っている。リーグ戦でのプレー時間が限られているから、そこまで疲労などの蓄積もないしね。また、今は実践でプレーすることで徐々に良い感覚を取り戻せているとも思っている。そうすれば良いプレーがもっと増えると思うから。自分のストロングポイントを発揮して、それをチームへ還元して自分なりの『色』を出したい。今はそのための準備を重ねている」

 

焦りは禁物。粛々と職務に邁進し、彼は必ずチームの核になって、勝利に貢献することを心に期している。

 

 

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