Column2017/04/14

【Column-040】 [太陽の下で-03] 『柏のために』

 

 2017年4月8日。Jリーグ第6節。試合前の時点で2勝3敗、勝ち点6で12位に付けていた柏レイソルは、ホームの日立柏サッカー場で同勝ち点13位の清水エスパルスと対戦した。柏は清水に勝利できれば前節のサンフレッチェ広島戦に続いて連勝をマークし、順位もランクアップする可能性があった。しかしチームは幾つかの好機を決められず、後半にカウンターから鄭大世、ミッチェル・デュークにゴールを奪われて敗戦を喫した。

 前節の広島戦で後半87分から途中出場して柏でのJリーグ再デビューを飾った細貝萌は引き続きベンチスタート。彼は仲間の勇姿をウォーミングアップゾーンで見つめながら自らの出番をひたすら待っていた。3月24日にドイツ・ブンデスリーガ2部のVfBシュトゥットガルトから柏へ完全移籍してから約2週間が経過し、合流後には町田ゼルビアとの練習試合に60分間出場してコンディションを整えてきたことで出場意欲を高めていたが、結局清水戦で彼に出番は与えられず、チームも再びリーグ下位への15位へと転落してしまった。

 

「当然今は、できる限りチームの力になりたいと思っている。清水戦で勝利に貢献できなかったのはとても悔しいけど、それでもリーグはまだ序盤戦だからチームが立て直しを図れるチャンスはある。また次はルヴァンカップがあるから、普段試合出場できていない選手がアピールできるチャンスでもある。自分も何とか試合に絡みたいね」

 

 2017年4月12日。YBCルヴァンカップ・グループステージ第2節。柏はアウェーの大宮NACK5スタジアムへ乗り込んで大宮アルディージャと対戦した。大宮は現在Jリーグ6連敗、得点1・失点10で最下位に沈んでおり、ルヴァンカップでは挽回を期していた。一方、大宮ほどではないとはいえ、柏もチーム状況を上向かせたい思いは同じ。下平隆宏監督は普段のリーグ戦で試合出場機会が限られているMF栗原遼一、FW大島康樹、途中出場の多いMF伊東純也、FWドゥドゥらを先発でピッチへ送り出し、その中には細貝の姿もあった。

 

 細貝の役割は中盤スペースをケアし、相手へ激しくアプローチしてボール奪取し、攻撃へ転換させることだった。その役割は果たせていたようにも見えたが、好機を生かせないチームの中で前へボールを運べない場面も散見され、徐々に苦しい表情を見せるようになる。後半に大宮のシュートが柏ゴールバーを直撃した時は帰陣した細貝が必死にクリアするシーンもあったほどで、彼とチームが最良のパフォーマンスを見せたとは言い難い。結局お互い死力を尽くしたゲームはスコアレスドローで決着。柏はリーグ戦の敗戦を完全には払拭できず、次節のJリーグ第7節、首位・ヴィッセル神戸とのアウェー戦へ向けて幾つかの課題を残した。

 

 チーム内における細貝の立場は全く確立していない。下平監督はキャプテンの大谷秀和と組むボランチのプレーヤーを日々模索していて、今季序盤は柏ユース出身の小林裕介を起用し、最近では広島戦でJリーグデビューを果たした同じくユース出身の手塚康平を2戦連続で先発出場させている。ここにルヴァンカップに出場した栗澤、そして細貝が加わり熾烈なボランチのポジション争いが勃発しているわけだが、チーム成績が伸び悩む今はシーズン途中に加入した細貝にも十分チャンスがある。

 細貝の力をどうやってチームにフィットさせるか。柏にはクリスティアーノ、ディエゴ・オリヴェイラ、ドゥドゥ、そして現在は負傷中だがハモン・ロペスという優れた外国籍FWがおり、彼らの個人能力を生かすチーム戦術が機能すれば十分浮上の余地がある。細貝とすれば攻守の連結役として中盤をくまなくカバーして味方攻撃陣を下支えし、攻守バランスの舵取り役を担いたい。

 

「とにかく今は待つしかないね。僕はチームに合流してまだ間もないし、最終的にチームの役に立つためにも個人的には焦ってはいない。けど、それと同時に当然ベストを尽くしていく中で少しでも早くチームの力になりたい。その中で昨日のルヴァンカップに90分出場できたことは良かった。僕が最後に90分やったのは10月だから、6カ月ぶりのフル出場だったからね。でも良かったのはそれだけ。チームは勝利を収めることが出来なかったし、僕が一番重要だと思うのはやはり結果だから」

 

 巻き返す時間は十分にある。焦らず動じず、細貝は自らの役割を認識して職務に邁進する。

 

 

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Column2017/04/4

【Column-039】 [太陽の下で-02] 『Jのピッチに立つ』

 

 2017年3月24日にVfBシュトゥットガルトから柏レイソルへの完全移籍を発表した細貝萌は、チーム加入からわずか6日後に予定されたJリーグ第5節・サンフレッチェ広島戦の帯同メンバーに入った。

「もちろん広島戦に出る準備はしていた。例えば、今の柏はセットプレーをゾーンで守っているので、各選手役割がある。そこで事前にチームから、『もし試合に出場したら、ここで守ってほしい』という約束事なども伝えられていた。だから試合出場の可能性はあるのかなとは思っていたんだよね。でも、まだチームに合流して5日で、練習の段階ですでにスタメンから出場することはないと分かっていた。ただ、広島戦は試合開始直後に先制したので、逆に自分の出番が訪れる展開になるのかなとは思っていた」

 試合は柏が大谷秀和の見事なミドルシュートで先制し、ホームの広島を抑え込む展開が続いた。そしてこれまでのゲームでなかなか機能しなかった守備も、チーム全体が強い意識付けで相手ボールホルダーへアプローチして相手の攻撃を無効化させることに成功した。

 

「聞いた話では、今季のゲームで最も内容の良いプレーを見せられたみたいだね。広島に自由を与えなかったし、攻撃面でも良い形が何度もあった」

 

 1-0で推移する試合の中で、細貝はピッチ脇のウォーミングアップゾーンで下平隆宏監督から声が掛かるの待ったが、その出場機会はなかなか訪れなかった。

「各新聞でも色々書かれていたみたいだけど、僕は別に出場機会を求めて柏を選んだんじゃないんだよね。ここに来たからといって、すぐに試合に出られるなんて甘い考えは最初から抱いていない。どんなチームでも仲間との競争に勝って、試合出場するチャンスを掴み取らなきゃいけない」

 76分、ディエゴ・オリヴェイラのPKで追加点を挙げた柏は逃げ切り態勢に入った。そして試合終了間際の87分、細貝はようやく3人目の交代で試合に出る資格を与えられた。

「7年ぶりのJリーグ出場だったけど、それほど感慨はない。むしろ3連敗していたチームが良い内容で勝利できたことの方が大きい。自分が柏に来たことで若い選手が、『細貝には負けられない』と思ってくれて、それが全体のプレーの向上に繋がれば、それはチームにとってとても良いことだと思っている。そういった効果って目には見えづらいけど、すごく大切なことだからね。それに僕はもうそういう年齢だから、チーム内での役割も考えているつもり。ピッチ内だけじゃなく、様々な面でチームに効果を与える。それも今の自分の仕事だから」

 

 広島戦で勝利した当日、チームは夜遅くに柏へ戻り、翌日には試合出場が無かった選手や出場時間が限られた選手で構成されたメンバーが町田ゼルビアとの練習試合を行った。

 

「僕は町田との練習試合で60分間出場したけど、プレーの感覚で言えば、まあまあ良かったと思う。ただ、練習試合が終わって帰ってきたら、結構疲れてたね。それに、この練習での意味合いは正直言ってコンディション調整にある。相手の状況もあるし、リーグ戦などはもっとハードになるだろうからね。この練習試合ではケガをしないように気をつけた。日本とドイツではピッチ状況が全く違うんだよね。日本のピッチはとても硬く、ドイツは芝が深くてもっと柔らかい。その分、足に掛かる負荷もかなり違うので慎重にプレーしなきゃいけないと思った。去年は接触プレーだったにしろ、ドイツで2度も負傷しているから。その点では手を抜くという意味ではなく、自らを制御する必要もあるのかなと。移籍したばかりでまたケガをしてしまったら、チームに大変な迷惑をかけてしまうからね。正直言ってケガをしてしまうのは仕方ない部分もあるけど、勿体無いケガだけはしたくないから」

 

 今の細貝は充実感に満ち溢れているようだ。チーム加入後間もないのに、チーム状態を見極め、課題や修正点、そして特長を把握しつつある。

 

「もうチームメイトの特徴なども掴み始めているよ。『各選手のストロングポイント』や『各選手の精神的な部分』、それぞれの個性がもう分かってきた。まだ柏に来てから1週間程度しか過ごしていないんだけど、何か、もっと長くこのチームの一員でいるような感覚もある。もちろんドイツとは違って、柏では母国語である日本語でコミュニケーションが取れるアドバンテージもあると思う。ただ、それよりも今の柏というクラブ、チームが自分にとってプレーし甲斐のある場所なんだと感じている。今はとてもポジティブに物事を捉えられているよ。だからこそ、できるだけ良い形でピッチに立って、自分の力をチームに還元させて勝利に貢献したい。まずはサポーターに自己の存在を認めてもらいたいからね」

 

 小さいながらも意味のある一歩。少なくとも黄色と黒のユニホームを着て公式戦のピッチに立てた事実は大きい。

 細貝萌の新たなる挑戦はまだ、スタートしたばかりだ。

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Column2017/03/28

【Column-038】新章スタート [太陽の下で-01] 『新たな物語が始まる』

 

細貝萌は、ドイツ・ブンデスリーガ2部のVfBシュトゥットガルトから日本のJ1リーグのクラブ、柏レイソルへの完全移籍を決め、ドイツを発ち、3月24日朝に日本へ到着。その足で成田空港から千葉県柏市へ向かい、午後には早くも記者会見に臨んでいた。表面的には電撃だった今回の移籍だが、細貝自身は移籍を決める前に相当の時間を要し、十分に熟考した上で決断していた。

 

「去年の12月の段階ではシュトゥットガルトから他のクラブへ移籍することは考えていなかった。でも、2017年に入ってから何かの変化を加えなきゃいけないというのが自分の中のテーマにあって、方向性を模索していた。今季はシーズン中に2度も負傷してしまい、その都度戦線離脱してリハビリをする期間も続いた。そして新しい選手を獲得したりすることで、チーム内での自分の序列も変わっていったこともあって、6年ぶりに母国でプレーするという気持ちになった。チームが結果を出す中でベンチ入りすらできない状況は何よりも厳しかったし、当然この状況は、自らの環境を変えたいと思う一番の理由になった」

 

新天地・柏に降り立った細貝は記者会見直後にホームスタジアム・日立柏サッカー場(日立台)のピッチでフィジカルコーチと共に軽いウォーミングアップをして身体をほぐし、翌日には早くもチームの練習に参加した。

 

「昨日は空港からクラブハウスに着いてそのままメディカルチェックを受けたんだけど、それとほぼ同じ時間に練習が始まったから、チームメイトと練習する時間はほとんどなかったんだよね。また翌日は大学チームとの練習試合が組まれていて、自分は帰国直後で時差ボケなどもあったから下平監督とも話して試合出場は控えて、コンディション調整に努めた」

 

2011年の1月に浦和レッズからドイツ・ブンデスリーガのバイヤー・レバークーゼンへ移籍した細貝は今回、約7年ぶりにJリーグでプレーする。もちろんドイツでプレーしていた時代も日本サッカー界の事を気にかけてJリーグの情報も得ていたはずだが、実際にピッチに立つとなれば以前との違いに戸惑うかもしれない。また柏レイソルというクラブ、チームについては彼自身初めて加わる組織で、まずはそのチームカラーや雰囲気を感じ取らなければならない。

 

「東洋大学との練習試合は1本目を観ました。その後僕も練習だったからね。まだチームに加わっていないから何とも言えないけども、ここで自分がどれくらい生きるのかは考えていた。今の柏は本当にチームが若いんだよね(笑)。練習試合の前に若そうな子が2人で話していたから、『若いね!何歳?』って聞いたら、『17歳です』だって(笑)。彼らは練習試合で駆り出されてきたユース選手たちだった。トップチームの選手かと勘違いしちゃったよ(笑)皆うまいからね! でも他の柏のプロ選手たちも顔が若い。だから少し世代間のギャップを感じてしまう(笑)。海外の選手は10代でも大人の顔つきをしているから歳が離れていても違和感がないんだけど、日本の選手はやっぱり10代だと若さを感じるよね。それは最近ドイツで暮らしていたから忘れていた感覚だった。でも日本語だとスムーズにコミュニケーションとれる分、余計に若い選手が僕に気を使ってしまうことがあるかもしれない。最初は仕方ないと思うけど、そこは徐々に遠慮しなくていいように、僕からアプローチしていきたいと思ってる」

 

長く日本を離れていたことで、今の細貝は面識のある選手が限られている。

 

「柏では大津と(鎌田)次郎くんは以前から知り合いだったけど、柏ではその2人しか直接は面識がない。大津はフル代表で一緒にプレーして、海外でも会ったことがある。彼はドイツやオランダでプレーしていた時期があるから、家にご飯を食べに来たこともあるよ。次郎くんは北京五輪代表候補合宿の時に出会った同世代の選手。確か当時の次郎くんはまだ流通経済大学に在籍していて、強化指定でJリーグのクラブに在籍していたんじゃないかな。記者会見の翌日には大津に誘われて昼食に行ったよ。街のイタリアンレストランで、他に輪湖直樹くんと栗澤遼一さんも来てくれた」

 

新たな環境に馴染むことは重要だが、細貝に課せられた究極の役割は柏レイソルというチームに貢献し、確固たる成果と結果をもたらすことにある。

 

「登録の手続きが間に合うならば、4月1日のサンフレッチェ広島戦から出られるみたい。ただ今のリーグ中断期間中の2週間でしっかり準備してきた選手たちもいるから、自分が簡単に出場できるとは思っていない。まずはコンディションを整えて、戦えるだけの状態にしなきゃいけないよね。いずれにしても、これからが楽しみだよ。少しでも早く柏サポーターに認めてもらえるように頑張らないといけないからね」

 

新チームに加わったばかりの細貝は顔色が良く、黄色と黒のユニホームを着て早く新緑のピッチに立ちたい欲求が高まっていた。眩しい太陽が降り注ぐ街で、彼とチームが紡ぐ物語の新章が始まった。 

 

 

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Column2017/03/24

【Column-037】 [光り輝く街で-26]  『太陽の街へ』

 

 細貝萌は、ドイツ・ブンデスリーガ2部のVfBシュトゥットガルトから日本のJ1リーグに所属する柏レイソルへの完全移籍を決めた。

 

 2016年8月、ヘルタ・ベルリンから新天地を求めて再チャレンジを始めたドイツ南部の大都市では様々な出来事があった。細貝が師事してシュトゥットガルトへの移籍を決断する動機となったヨス・ルフカイ監督がシーズン開幕から数試合で辞任したことは青天の霹靂だった。また細貝自身もシーズン序盤に右足太もも前を肉離れし、続けて右足小指の骨折にも見舞われて苦境に陥った。骨折直後に痛み止めの注射を打って強行出場した第9節のディナモ・ドレスデン戦は0-5の大敗。本人の調子は悪くなく、自らのプレーパフォーマンスだけが敗戦の要因ではなかったが、それでも責任を痛感した細貝は改めて戦線離脱を決意し、そこからハネス・ヴォルフ監督率いる新チームの中で序列に変化が生まれた。

 

「2017年を迎えてから、何かの変化を加えなきゃならないというのが自らのテーマだった。もちろん、それはシュトゥットガルトというチームの中で、とにかく何か変化を求めていた。でも、ウインターブレイク明けの強化キャンプ中に練習試合での強い打撲で別メニュー調整を強いられ、ここで一層チーム内の立場が厳しくなった」

 

 長期的なチーム構築を見据えるヴォルフ監督はシーズン中に度々負傷してチームを離れる三十路の選手のプライオリティを下げ、アンカーのポジションに24歳のマティアス・ツィンマーマンや20歳のアント・ギルキックらを起用し、新たにガーナ代表であるオフォリを戦力として獲得した。それをきっかけに細貝は負傷が癒えた後もベンチ入りメンバーから外れるようになった。

 

「2011年の冬にJリーグの浦和レッズからドイツ・ブンデスリーガ2部(当時)のアウクスブルクへ移籍してからこれまで、自分はドイツでほとんど負傷したことがなくて、チームに帯同できないこともなかった。でも今回は時間が経つにつれて立場が厳しくなってきて、何かしらの決断を下さなきゃならない状況にあることを自覚した」

 

 昨年6月に30歳を迎えた細貝は、これらもヨーロッパでプレーし続ける意思を持っていた。しかし今回、精神的にも立場的にも極限の状況に置かれる中で、彼は数年ぶりに母国でのプレーを憧憬するようになった。

「正直、昨年の6月、そして12月の段階ではチームを移籍する、もしくは日本に帰る選択肢を持ってはいなかった。だからこそ数多くあったJリーグのオファーも断った。でも、今のこの状況はプロサッカー選手として行動を起こさなきゃならない時だと思ったんです。所属チームでベンチ入りすらできないのは何よりも厳しい。自分のサッカーキャリアの将来を見据えた末で、選手はやはり、自らの力を一番求めてくれる場所でプレーするのが最善だと考えたんです」

 

 今季のヨーロッパ4大リーグの移籍期間は1月31日が締め切りだった。つまり今の状況では細貝の選択肢は限られていた。それでもシーズン中の移籍を模索した時、真っ先に頭の中に浮かび上がったのはJリーグでのプレーだった。

「Jリーグの冬の移籍締切は3月31日まで。嬉しいことに、このタイミングにも関わらず僕に対して幾つかのクラブが興味を示してくれたんです。そして今回、柏レイソルというチームの正式オファーを受けて、このクラブへ移籍する決断をしました。今の自分の年齢、柏のチームスタイル、そして自分のプレースタイルがマッチするのかどうか。今季の柏は現在リーグ3連敗中で、その中で僕の力が少しでも役に立てばという思いがある。僕は、このチームの助けになりたい」

 

 細貝は前橋育英高校から2005年に浦和レッズへ加入し、Jリーグで6シーズンプレーした。当時と現在ではJリーグの環境やレベルに差異があり、自らのプレースタイルも変化している。しかし、それでも彼には豊富な経験に裏打ちされた自信と個性がある。

 

「今の柏は若いチームという印象がある。僕がこのチームに入ると、自分はチーム内で4番目の年長者になる。そうなれば自分のことだけに邁進するのではなく、チームメイトを引っ張っていく役割も求められるのは当然。僕はできる限り、その尽力をしたいし、その覚悟もしている。でも、それと同時に僕は日本でプレーするのはかなり久しぶりなので、柏のサポーターが歓迎してくれるかが少し不安なんだよね……。僕のことを少しでも知ってくれていれば良いんだけど…(苦笑)」

 

 一方で細貝は、かつて所属した浦和にはどんな思いを抱いているのだろう。

 

「僕は浦和レッズというクラブに育てられてドイツで挑戦することができた。だから以前も今も浦和レッズというクラブが大好きであることに何も変わりはないんです。でも今の浦和はミハイロ・ペトロヴィッチ監督という素晴らしい指揮官の下で、実力のある選手たちがハイレベルなサッカーをしてタイトルを目指している。その中で僕の力がどれだけ必要とされるのか。それは結果論に繋がるから何も分からないんだけど、今の自分の状況、そして今後のことを考えたら熱心に僕を誘ってくれた柏に行くべきだと思ったんです。本当に本当に悩んだけれども、様々な事象を加味した上で決めました。久しぶりに手の肌も一気に荒れ、今は少し精神的にやられている状況なんだけどね…」

 

 簡単な決断ではなかった。それでも細貝自身が備える志は揺るがない。プロサッカー選手として、今出来る最大の力を発揮する。その場所は、黄色と黒をチームカラーとするクラブが相応しいと確信している。

「実は僕が浦和レッズでプレーしている時代は、レイソルが国立競技場でホーム戦を開催していたんです。だから僕は、柏の本来のホームスタジアムである日立台のピッチに立ったことがない。スタンドからピッチまでの距離が近い、あの日立台でプレーした時に、僕はどんな思いを抱くんだろう。実は、小学生の文集には『柏レイソルに入団したい』と書いているんだよね。今は、その時が早く訪れてほしいと願っているし、柏レイソルの選手としてプレーするのが本当に楽しみでならない。そしてこれから僕の人生はどうなるか。きっとこれからも多くの壁が立ちはだかると思う。でも、それを自分の力、家族、応援してくれる方々の力を借りて、一つひとつ乗り越えていきたいと思う。」

 

 細貝萌の、新たな挑戦が始まる。

 

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