Column2016/10/2

【Column-020】 [光り輝く街で-09]  『中軸として』

 細貝萌がヘルタ・ベルリンからVfBシュトゥットガルトへ完全移籍した理由はいくつかある。そのひとつにヨス・ルフカイ監督の存在があったことは確かだ。2011年初頭にJリーグの浦和レッズからドイツ・ブンデスリーガのバイヤー・レヴァークーゼンへ移籍した彼がすぐさまレンタル移籍した先が、ルフカイ監督率いるアウクスブルクだった。日本人MFの能力を見出した指揮官はその後、ヘルタ・ベルリンでも細貝と揺るぎない信頼関係を構築した。

しかし、今季からシュトゥットガルトの指揮官に就任したルフカイ監督は突如辞任を表明し、チームから去ってしまった。

細貝自身は恩師との別れを冷静に捉えようとしたが、やはり動揺は隠せなかった。

彼はヘルタ時代に、同じくルフカイ監督と別れた後、(2015年2月にルフカイ監督が解任され、新たにパル・ダルダイ監督が就任)大きなダメージを負った経験があるからだ。

 

 だが、彼の懸念はひとまず杞憂に終わった。ルフカイ監督の後を引き継いだ暫定監督のオラフ・ヤンセンは当然の如く、アウェーのカイザースラウテルン戦で細貝を先発起用してフル出場させた。左太もも前肉離れで約3週間チームから離れていたにも関わらず、暫定監督は彼をアンカーのポジションで起用し、続くホームでの首位・ブラウンシュヴァイクとの一戦でも連続フル出場させたのだった。そして、ブラウンシュヴァイク戦後にヤン・シュインデルマイザーSD(スポーツディレクター)から新監督の正式就任が発表された。ボルシア・ドルトムントの下部組織で監督を務めていたハネス・ヴォルフ氏で、年齢は35歳だという。細貝とわずか5歳差の新進気鋭にチームを委ねる。この決断が41年ぶりに2部降格を喫したシュトゥットガルトにどのような影響を及ぼすのかは誰にも分からないが、細貝自身は新指揮官の就任をどう思っているのか。

 

「新しい監督とはクラブハウスで初めて会って、その時にしっかり話をしました。これからまた、チーム内のスタメン争いが始まると思うけど、自分は自らの役割を全うするだけだからね」

 

 新指揮官就任初戦となったアウェーのVfLボーフム戦、細貝はこれまで通りアンカーのポジションで先発フル出場した。カイザースラウテルン戦、ブラウンシュヴァイク戦、そしてボーフム戦は中2日の連戦という強行軍だったが、細貝は3試合連続で先発フル出場を果たした。指揮官が代わっても立場が変わらないのは、彼がこれまで築き上げてきた実績と信頼の証でもある。その証拠に、この3試合では常に中盤中央に立つ細貝の下にパスが集まり、彼を経由して攻撃が始まっていた。特にバックラインからビルドアップする際は味方選手が細貝の姿を探す所作が目立ったし、中盤でコンビを組むキャプテンのクリスティアン・ゲントナー、攻撃を司るアレクサンドル・マキシム、左ウイングのケヴィン・グロスクロイツ、そして右ウイングのポジションでチャンスを生み出す浅野拓磨は細貝のパスを受けるために精力的にピッチを駆けた。

 

 シュトゥットガルトのキープレーヤーは細貝であることは内外に示された。その影響は如実に示されている。3連戦最後の試合となるアウェーのVfLボーフム戦。敵将のヘルトヤン・フェルベーク監督はアンカーの細貝に対してマンマーク守備を敷いた。細貝が自陣奥深くでボールキープしようとした瞬間に相手トップ下が襲い掛かる。自由を奪われた細貝はビルドアップに難儀し、ここ2試合のようなオーガーナイズを施せなかった。結局シュトゥットガルトはゲントナーのゴールで先制したものの、終盤は防戦一方となり、79分にヨハネス・ヴュルツにゴールを奪われて同点に追い付かれ、試合は1-1で終了した。

「今日は全然駄目だった。相手がずっと近くにいたからボールにもあまり触れなかったし、70分過ぎからは身体も一気に重くなった」

 怪我明けすぐに中2日で続いたハードな連戦を経て、細貝は自らの課題と成長を実感している。シュトゥットガルトは4勝1分2敗の勝ち点13で、首位・ブラウンシュヴァイクと勝ち点5差の5位に付けている。

 

(続く)