Column2016/11/5

【Column-024】 [光り輝く街で-13]  『秋耽る日々』

 

VfBシュトゥットガルトはブンデスリーガ2部第11節のカールスルーエ戦で2-1と勝利した。同じバーデン=ヴュルテンベルク州を本拠地とするシュトゥットガルトとカールスルーエとの戦いは激しいライバル関係を形成するダービーで、今季は2部の舞台で激突した。カールスルーエのホームであるヴィルトパルクシュタディオンは当然ヒートアップしたが、そこで先制ゴールを決めたのがシュトゥットガルトの浅野拓磨だった。10分、右サイドから上がったクロスをカルロス・マネがファーサイドで折り返し、ゴール中央で構えた浅野が左足でゴール右隅へ流し込みゴールゲット。浅野はチーム加入から7試合目でヨーロッパ初ゴールを挙げ、代名詞であるジャガーポーズを「一瞬だけでしたけど(笑)」決めて喜びを表した。その後、シュトゥットガルトは2点を追加し、相手の反撃を1点に抑えて3-1で勝利。首位・ブラウンシュバイクとの勝ち点差3の2位に躍り出て、華々しくトップ争いに参入した。

 ハネス・ヴォルフ監督の下で再生を図るシュトゥットガルトの中で、細貝萌は右足小指骨折のリハビリに明け暮れている。チームからは全治10日と発表されたが、10月13日の練習で骨折を負ってから、すでに3週間が経過している。それでも本人は前向きに物事を捉えて懸命にリハビリに励んでいる。

「確かにチームは、何でなのか分からないけど、10日間と発表したんだよね。でも、ケガした時の足の痛みとか、その後の患部の腫れ具合などを考えれば、4週間くらい掛かるのかなと自分の中で自覚していた。実際、ドクターにはそのぐらい掛かると言われていたからね。今はチームドクターやリハビリチームと共に毎日リハビリメニューに励んで、元の状態に戻す作業に励んでいる」

  負傷してから2日後のリーガ第10節・ディナモ・ドレスデン戦に痛み止めの注射を打って強行出場した影響はあったかもしれない。しかし今は、志半ばでチームを離脱して完治を目指す決断を尊重して粛々と回復を目指している。小指側に穴を開けたトレーニングシューズでジョギングも始めた。徐々にスパイクを履いてボールを蹴る時間も増えてきたとは言え、まだ患部の腫れが引かずに痛みが走るので、焦らずじっくりと治そうと決意している。

「次の第12節・アルメニア・ビーレフェルト戦が終わったら代表ウィークに入ってリーグが一時中断されるから、その間の2週間で何とかケガを治して良い状態で復帰したい。チーム内でのコミュニケーションは、今もリハビリを終えてからクラブハウスに寄ってチームメイトやスタッフと話しているし何も問題ないよ。でもヴォルフ監督体制になって数試合で怪我をしちゃったし、まだ監督と詳細な話し合いや関係性がそこまで築けていない。やっぱり試合に出ないと、そこは突き詰められないから、まずはケガを治して復帰して、また一からチーム内の競争を勝ち抜かなきゃならない」

 

 現状を話す細貝の声のトーンはさすがに沈みがちだ。無理もない。ドイツに渡ってからはストレス性の発疹で戦線離脱した2015―2016シーズンのヘルタ・ベルリン時代以外に、ケガらしいケガをしたことがなかった。それが、シュトゥットガルトへ来てからは太もも前の肉離れ、そして右足小指と、連続して負傷してしまった。

 それでも、今の細貝には自らを支えてくれる存在がある。

「今は家族もドイツに来て生活も始めたから、家族との時間がとても大切な時間になっているよ。2人ともドイツに来た当初は少しだけ体調を崩していたけど、今は元気だからね。最近は赤ちゃんの混合ワクチンっていうの? その注射を打つために現地のお医者さんと直接連絡を取ったりしているところ。ドイツ語が難しい(笑)特に病院用語が…。異国の地なので病院など、プライベートの部分で日本語以外でのコミュニケーションなども適切にしなきゃいけないけど、奥さんもドイツ語を少し理解出来てるし、何も問題ないかな」

 あと少し、もう少し。彼は今、必ず訪れる復活の時を待っている。

 

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