Column2016/12/3

【Column-027】 [光り輝く街で-16]  『再びピッチへ』

 

 右足小指の骨折で戦列を離れていた細貝萌がブンデスリーガ2部のニュルンベルク戦で公式戦5試合ぶりにベンチ入りし、86分にマティアス・ツィマーマンに代わって途中出場を果たした。

 

細貝がピッチに立った時のシュトゥットガルトは2-1でリードしている状況だったが、チームは同点を狙うニュルンベルクの猛攻を受けていた。

 

「相手が押せ押せの中での出場だったんで、内容面を含めて難しかったです。ボールが自分の頭上を越えていく感じだったしね。自分の中では相手からボールを奪えるはずのシーンで奪えなかったり、味方から苦し紛れにボールを預けられたシーンもあって厳しかった。感触は今ひとつだったね」

 細貝が負傷離脱している間の約6週間、シュトゥットガルトはポカールの2次ラウンドでブンデスリーガ1部のボルシア・メンヘングラッドバッハに敗戦した以外はリーガで3勝1分と無敗を堅持し、順位も首位・ブラウンシュヴァイクに次ぐ2位に付けていた。その間、アンカーのポジションには24歳のツィンマーマンが起用されていて結果も残していた。1シーズンに2度のケガで離脱を繰り返した細貝は今、新たなるチーム内競争に打ち勝たねばならない立場にある。

 

「残り時間が少ない中で途中出場した自分に与えられたタスクは、失点せずに試合を終えることだった。5試合ぶりにメンバー入りして、リードしている状況で、僅かな時間でも起用してくれたヴォルフ監督には感謝している。次はスタメンで出場したい気持ちもあるけど、まずは少しずつ階段を上がりたい。今年はあと3試合ある。その中で、どれだけ自分のコンディションを戻せるか。今シーズンのケガをする前は調子が良かったと自分では思っているし、何とかその状態に焦らずに戻したいと思っているよ」

 ニュルンベルク戦前、今週の練習の中で相手のシュートをブロックした際にケガをしていた右足小指にボールを当て、ビリビリとした衝撃が走った。その痛みは残るが、それでもプレーに支障はないと、本人は試合に向けてコンディションを整えてきた。

「小指は、骨折してたんだから、ボールが当たったらまだ痛いのは当然だよ(苦笑)。でも、症状は悪化していないし、プレーの妨げにもならない」

 ピッチに立つからには患部を庇って躊躇などしない。それよりも、今は自分の力をチームに還元して確固たる結果を得る意欲の方が高い。

 

「正直、チームがこの順位(2位)にいるのは当然のこと。2部の他のクラブとの戦力と質を考えれば、シュトゥットガルトは2位じゃなく1位にいなきゃいけない。首位とは1ポイント差だから、最低でも今年中にはトップに立っていたいね。その為にベストを尽くさなくてはならない」

 ニュルンベルク戦では同僚の浅野拓磨が1ゴール1アシストして3-1の勝利に貢献したが、細貝は若きFWにこんな言葉を投げかける。

「シュトゥットガルトの選手の能力は高い。リーグの中で上位を狙えるクラブに在籍している選手というのは、他のクラブとは状況が違う。拓磨にしても、上位のクラブに在籍していれば多くの得点チャンスに絡めて点を取れる。今回、拓磨は1ゴール1アシストしたけど、あと2点くらい取れる好機もあったよね。今の拓磨は自らの能力を発揮しやすい立場にある。だから、これからもっともっと点を取れると思う。僕は、拓磨はこのシュトゥットガルトで15点くらいは最低でも取ってもいいと思う」

 また、細貝は自らをも戒める。

 

「ボランチのポジションは前目の選手に比べると明確な数字で結果が表れないけど、それでも上位チームでプレーすれば自分の求めるプレーを発揮しやすいわけで、言い訳が効かない面がある。自分は先発で起用されていた時期に2度もケガをしてしまったわけだから、ここから挽回を図らなきゃね。このクラブでポジションを確立させたい。欲をかきすぎるのは良くないけど、それでも今後は常時試合出場できるように頑張る。これからが勝負だよ」

 

 そんな細貝に、またしてもアクシデントが起こった。ニュルンベルク戦翌日に腹痛が生じ、食事も摂れずに寝込んでしまったのだ。今季の彼はコンデイション維持に苦慮している。この苦境を乗り越えられるか。今までにない試練に直面しながら、それでも細貝萌は再びピッチに立ち、その存在価値を示さねばならない。