Column2016/12/18

【Column-029】 [光り輝く街で-18]  『痛恨の敗戦』

 

 シュトゥットガルトはホームのメルセデスベンツ・アリーナでブンデスリーガ2部第16節・ハノーファー戦を戦い、1-2の逆転負けを喫した。前半12分に浅野拓磨のアシストを受けてシモン・テローデが先制ゴールを挙げたものの、後半に2失点する惨状を晒した。その試合内容には平日の夜にも関わらず数多く詰めかけたシュトゥットガルトサポーターも落胆の色を隠せなかった。また、これでシュトゥットガルトは再びブラウンシュバイクに首位の座を明け渡す格好となり、結果を果たせなかったチームには焦燥の念が募る。

 ハノーファー戦の細貝萌は右足小指骨折からの復帰以降3戦連続でベンチスタートとなったが、今試合では初めてメンバー入りしながら不出場に終わった。ハネス・ヴォルフ監督は逆転される試合展開の中で攻撃的な選手を途中交代で送り込む采配を施したため、中盤中央で起用される細貝には出番が回ってこなかった。メインスタンドから見て右側ゴール裏のウォーミングアップゾーンで身体を動かしていた細貝は、3人目の交代としてカルロス・マネに代えてコーチからダニエル・ギンクツェクに声が掛かった瞬間にベンチへと引き上げていった。

 細貝が心境を述べる。

「今季、負傷で戦線離脱している最中の試合を除いて、チームに帯同した試合でピッチに立てなかったのは初めてのことだった。チームも逆転負けをしてしまったし、後味が悪い試合になってしまったね」

 敗戦翌日のチームは午前中にダウントレーニングを兼ねた練習を行ったが、試合に出場しなかった細貝はフルメニューをこなしてコンディションを整えた。そして翌日はオフ日となったが、シュトゥットガルトではオフ日の夜に監督、コーチなどのスタッフ陣、そして選手とその家族を招いてクリスマス会が行われることがあり、今回はそれが予定されていた。細貝は現在一緒に生活をしている妻と生後6か月の娘を連れて、その食事会でチームメイトらと交流した。

「チームメイトのアフリカ系の選手が娘にキスしたんだけど、娘は全然嫌がってなかったよ(笑)。あまり人見知りしない子で、その点は安心してるんだけどね」

 そして試合から3日後。前半戦最終節のヴュルツブルク戦に臨むチームは本格的にトレーニングを再開したが、その練習内容が非常にハードだった。練習前にチームミーティングを実施してヴォルフ監督から檄を飛ばされた選手たちは、次第に冷え込む夕方の16時前後にトレーニングピッチへ現れてウォーミングアップを開始。そしてビブスで3チームに分けられてパスゲームを行い、最後は3チームが入れ替わりでミニゲームを精力的にこなした。そのミニゲームでは、ヴォルフ監督が何度も選手たちを集めて激しく声を荒げて指導する姿があった。

「ヴォルフ監督は情熱的というか、はっきりと物を言うタイプの指揮官だね。俺もミニゲームの途中で名指しされて、『バックパスの時にパスが弱い』と言われたよ。まあ、特に今は負けた後だし、そうやってチーム全体の士気を高めるのは当然のこと。自分の立場としては、その中でチーム内競争に勝ってポジションを獲得しなきゃならない」

 

 練習が終わる頃の18時前後にはすでに日が暮れていた。ドイツの冬は日の入りが早い。また、夜は気温も零下近くまで下るため、選手たちの吐く息も白くなっている。

「とにかく今は、最終節のヴュルツブルク戦で勝利して、良い形で前半戦を終えたいと思っている。その試合が終わればリーグは一旦中断期間に入って、俺や(浅野)拓磨は日本へ帰国する。日本には2週間くらいしか滞在しないけど、そこで少しでも英気を養って、年明けから行われるミニキャンプに臨んで1月末の再開初戦に良い形で入りたいね」

 右足小指の骨はまだ痛むが、プレーに支障はない。細貝は今、チームの浮沈と共に、自らの存在価値を高める目標を掲げている。