Column2017/01/7

【Column-031】 [光り輝く街で-20]  『再び、目覚めの時』

 新たな年が明けた。昨年末にドイツから日本へ帰国していた細貝萌はつかの間のオフ期間を過ごし、正月明けには早くもシュトゥットガルトへ戻った。日本滞在中は家族やお世話になった方々との会食などをして過ごしたが、その中でもチームから指示された自主トレーニングは毎日欠かさなかった。

「特に年末年始は太陽が昇る前の朝4時とか5時とかからトレーニングをスタートさせて、まだ明るくならない6時過ぎには運動を終えていた。これはドイツとの時差を考え、なるべく現地の時間で換算して身体を動かしたい意図があった。すぐにドイツへ戻るわけだから、身体を環境にアジャストさせなきゃならない。そのために、日本では早朝に身体を動かしていたんだよね。かなりキツかったけど…(笑)」

 ドイツ・ブンデスリーガは1部、2部ともにウインターブレイクがあり、VfBシュトゥットガルトの再開戦は1月29日のアウェー、ザンクト・パウリ戦になる。チームは年初早々に再始動し、1月中旬からはポルトガルでキャンプを張る予定だ。


 

  「日本からシュトゥットガルトへ帰国してからは、すぐにクラブへ行ってメディカルチェックや体力測定などをした。この後、しばらくはシュトゥットガルトでチーム練習をして、その後にキャンプをする。キャンプは、まあ、辛いよね(笑)。でも、試合で戦うための身体作りをするうえでは重要だし、それがプロサッカー選手の責務だから。(ハネス)ヴォルフ監督の下でのキャンプは初めてだけど、そこで与えられたメニューをこなして自分の力を見せなければならないからね」

 今回、細貝は家族を伴わず、ひとりでドイツへ戻った。生後7か月弱の愛娘が日本で定期検診を受ける事情などがあったからだ。

「1月は僕もキャンプなどで家を空けてしまうからね。2月には妻も子どももシュトゥットガルトへ戻って来るから、それまでは仕方がないよね。これまでもひとり暮らしは経験してきたし……。まぁ、もちろん家族がいたほうが気持ちも安らぐし、生活リズムも安定するから、家族の大切さをより感じることになるだろうね」

 シュトゥットガルトはウインターブレイク前にリーグ戦で連敗を喫し、リーガの順位も3位に落ちてしまった。ブンデスリーガ2部のレギュレーションでは1部への自動昇格は2位以内で、3位は1部16位とのプレーオフを勝ち抜かねば昇格を果たせない。無論、今季のシュトゥットガルトは2部での優勝と1年での1部復帰を至上命題としている。究極の目標を達成するために、細貝自身も相応の覚悟を口にする。

「ブレイク前に3位に落ちてしまったのは良くないこと。これからチーム全体が同じ方向を向いて、ひとつにまとまって目標に突き進まなきゃならない。自分自身もケガが治ってからは、なかなかコンディションが戻らなかったところもある。だからこれからまたポジション争いをしなきゃならない。ただ、それでも僕はあくまで自分らしくプレーしたい。自分の特徴をしっかり発揮してチームに貢献できれば、必ずピッチに立ち続けられると思っている」

 真冬のシュトゥットガルトは連日零下の気温が続いている。ドイツ生活の長い細貝はすでに極寒の環境に慣れたが、プロサッカー選手として、冬のトレーニングではいくつかの工夫をしているという。

「やっぱり気温がマイナスになるとケガのリスクも高まるから、しっかり身体をほぐしてから運動を始めないとね。今はクラブハウスの中でしっかりウォーミングアップしてから外のピッチに出ているから、それほど寒さはプレーに影響していない。それに、シュトゥットガルトにはスパイクを温めるヒーターもあって、その機械にスパイクを入れておくとほかほかになるから、それを履いてピッチに出ると足が冷たくならないんだよ。それだけシュトゥットガルトというクラブは設備が整っているということなのかもしれないね」

 昨年負った右足小指骨折の影響はなく、すでに患部から痛みは感じない。

「前半戦は2度のケガで出遅れた分、ウインターブレイク明けからはまたしっかりプレーするよ。もちろんケガには気をつける。もう、リハビリしたくないから(笑)」

 休息を終えた『虎』が、再び目覚めようとしている。