Column2019/03/19

【Column-065】 [微笑みの国で-02]『確かな手応え』

 

ブリーラム・ユナイテッドの細貝萌が、タイ・リーグ1での初先発を飾った。

 

長期のリハビリを経て、チームに完全合流を果たしたのは試合の3日前。

すでにリーグ第3節のプラチュワップFC戦で途中出場していたが、このときはチームが2-0とリードしている状況で、細貝自身も久しぶりに実戦でプレー感覚を確かめるような段階だった。しかし今回は昨年度のリーグ2位で、今季もブリーラムと共にリーグチャンピオンの座を狙うバンコク・ユナイテッドとの重要なゲームだった。それでもブリーラムのオーナー、ボジダル・バンドビッチ監督は本人に「プレーできるか?」と聞き、細貝自身も「できる」と即答した。

当初、細貝に任されるはずのポジションはアンカー+ダブルインサイドハーフの逆三角形を形成するインサイドハーフだった。しかしアンカーのレギュラーが負傷してしまい、細貝は急遽そのポジションでプレーした。

 

「最初は前目のポジションでプレーするはずだったんだけど、チームメイトが負傷してしまい、アンカーの役割を任された。ただ元々中盤の底でプレーしたいと思っていたから、仲間には申し訳ないけども、結果だけ見ればこのポジションでプレーできて良かったと思っている」

 

ただ、細貝にとって先発出場してからの時間はとてつもなく長かった。夜のゲームでも30度を超える気温とジメジメとしたタイ特有の湿度は、ただでさえプレーヤーの体力を低下させる。細貝自身も当地でトレーニングを重ねてきたとはいえ、実戦とは全く異なることを自覚したかもしれない。

 

「本当にキツかった。試合中に頻繁に監督やチームマネージャーから『大丈夫か?いつまでいける?』と聞かれたけど、『だめだ』と言えるような状況でもなかったから懸命にプレーした。全体合流して皆と一緒に練習してから3日しか経っていないから、やっぱり辛かったよ。結局、終盤にペドロ・ジュニオールが先制点を獲ってくれて、その直後の80分くらいに交代した」

 

体力面の辛さを痛感した一方で、プレー感覚については一定の手応えを掴んだとも言う。

 

「今日はACLとの連戦で過密日程の中での試合、またアウェーでもあったから、リトリートして守備を固める形を採ったんだよね。でも、その中でも自陣で味方センターバックやサイドバックからパスを引き出しながら、スムーズにボールポゼッションできたと思う。まだディフェンスのところで相手に強く行けないこともあったけど、運動量を含めて、そのあたりのベースを高められれば、もっともっとプレー内容が向上するだろうし、ブリーラムの中盤を引っ張っていける自信はある」

 

ブリーラムはタイの常勝クラブとしてリーグを牽引すべき存在だ。そのチームの中で、細貝は外国籍選手として、また年齢的にもリーダシップを発揮していかねばならない。

バンコク・ユナイテッドとの一戦は、この地で闘っていけると革新できた意味で、彼にとって大変意義深い一戦となった。

 

「体調不良で長い間戦線離脱して、このタイという新天地で戦うことを決めて、ようやくチームメイトと共に試合ができた。しかもバンコク・ユナイテッドという優勝を争うチームと戦えたことは自信にもなった。これから国際Aマッチウィークで約2週間リーグが中断するから、そこでもう一回コンディションを整えて、またブリーラムのために戦う準備をしていきたい」

 

試合後の彼の声は、久しぶりに明るく弾んでいた。

バンコクからブリーラムへと戻るチームバスの中で、その手応えを噛み締めながら……。