Column2020/04/18

【Column-079】 [微笑みの国で-17] 『延期されたリーグ』

細貝萌が戦うタイリーグ1は、新型コロナウイルスの流行によって中断されていたリーグの再開を今年の9月と決定し、リーグ終了を5月とする日程変更を発表した。つまり今回のウイルス流行に伴って、当初は3月から11月まで実施していた『春秋制』から、9月から翌年5月までの『秋春制』へと変更したのだ。細貝が言う。

「このタイミングで、タイリーグはヨーロッパの主要リーグと同じ時期のシーズンへ変更することを決断した。また9月からというのも、それまでにタイ国内で新型コロナウイルスの感染が終息していることが条件になっていると思う。今のタイ国内は感染者が増加していない早い段階に商業施設やレストランなどを休止し、コンビニエンスストアも夜の営業を取りやめるなどの行動制限を施すことでデータ上では感染者数が減ってきていて、治癒され退院している方も増えている。ただ、ここで気を抜けば再び蔓延の可能性もあるから、今は慎重に様々なことを判断しているのだと思う」

 

シーズンの再開が9月まで延期されたことで、細貝を含めたタイリーグ1でプレーする各選手は急遽長期のオフ期間を過ごすことになった。

「クラブの活動は、これからミーティングなどを重ね、その後はクラブからのアクションを待ちながら当面は約2か月半の長期オフに入る。その間、当然だけど僕は日本へ帰らずにバンコクに留まります。日本に帰る選択肢は今のところないですね。その理由としては、まずはここから日本へ帰るまでに空港などの公共施設を利用することになるけれども、それ自体が感染のリスクへと繋がる。また、僕や家族がもし感染しなかったとしても、国を行き来することで他の方にウイルスを移してしまうリスクもあるわけで、他人に迷惑かける可能性も避けなきゃいけない。今は殆どの時間を自宅で過ごすわけだけども、それはバンコクでも日本でも同じことだから、僕自身の考えとしては『Stay at home』の意識で、こちらで生活を続けるしかないかな。ただ、その間、オフ期間中の過ごし方については、これまでと異なるアプローチで取り組まなければならないと思っている。例年は海外でプレーしていても一度日本へ帰国して、そこで馴染みのトレーナーやマッサージ師の方などと体のケアについて相談しながらトレーニングに励んでいたけども、今回は彼らをバンコクに呼ぶこともできないわけだから、普段のシーズンOFFとは全く状況が違う。今の心配は、そのようなイレギュラーな状況でリーグ再開までにしっかりと自らのコンディションを維持できるかどうかだと思っている」

 

現状では細貝、そして妻と娘の体調は良好で、何も問題はないという。娘の幼稚園は閉園されており、家族全員が自宅で過ごす状況だが、細貝は今だからこそできるコミュニケーションを図ろうと考えている。

「今は妻と娘が一緒に料理したりしていますよ。また僕自身も娘と遊ぶ時間が増えましたね。ですが、行動が限られる今もっともっと遊んであげないとと毎日反省することも多いですね」

 

『そして今だからこそ』という思いは、今後の細貝自身の人生にも生かしたい指針でもある。

「こういうときに何が重要かを考えるのは大切なことですよね。30代も中盤に差し掛かって、僕のサッカー人生も長くないことを実感している中で、将来、サッカー選手の後の人生がすでにスタートを切っているとも思っている。このオフをどう過ごすか、そしてどのようなリズムで、今後の人生設計や周囲の方々との関係性にも変化が生まれるのかな」

 

世界中がウイルスの流行、感染で危機的な状況に陥る中、それでも明るい未来があることを信じて、その時に向けて熟慮して、制限付きながらも行動できることはたくさんある。

『今だからこそ』。その言葉が、今の細貝を突き動かす重要なキーワードになるのかもしれない。