Column2021/03/7

【Column-085】 [微笑みの国で-23] 『連戦の今シーズン最終盤』

 

タイのリーグ1は3月末に終了するシーズンに向けて連戦が続いている。

コロナ禍の影響で何度も中断を余儀なくされた今シーズンはイレギュラーな案件が乱立し、その影響がクラブ、チームにのしかかっている形だ。バンコク・ユナイテッドでプレーする細貝萌が語る。

「2月と3月の2か月間で、リーグ戦とカップ戦を合わせて14連戦を消化しなければならない。しかもその試合間隔が中2日の場合も結構あるから、コンディション調整はとても難しいと感じている」

 

通常日程を消化するプロチームは試合を行った翌日に身体のケアを兼ねたトレーニングを行い、その翌日にオフ日を設ける。そしてオフ明けから再び週末のゲームに向けて練習を重ねるわけだが、これが連戦になると、その日程調整が難しくなる。特に中2日でゲームを消化することになると、試合翌日にダウントレーニングをしたら翌々日は試合前日となり、負荷を掛けたトレーニングを行えずに再び本番を迎えることになる。選手たちは休養の機会を得られず、監督以下コーチングスタッフはチーム構築の機会を削がれてしまうわけだ。

今年の6月に35歳となる細貝にとっては、コンディション調整の面でも幾つかの不安を抱えている。

「連戦になるとどうしても身体をケアできる時間が減ってしまう。それでも、これまで通りコンディションを整えないと不安だから、無理をしてでも体調を整えようとしている。だからなのかわからないけど、今のコンディションはかなり良い。例えばプールに入って身体を弛緩させる作業なども、今ではナイターゲームが終わった深夜に自宅へ戻ってからするようになった。真夜中にプールに入るなんて、なんだか変だよね(笑)夜中2時とかに入る時もあるぐらい(笑)。他にもCompexやNormaTec、マッサージガンなども良く使っている。今はそのような調整をしているんだけど、お陰でコンディションはとても良い感じを維持することが出来てる。」

 

これまでであれば、コンディション調整のトレーニングも全てチーム内の施設で行うことができた。しかし、今のような過密日程下では自宅で過ごすプライベートタイムでもその作業をこなさねばならない。

「うーん、仕事の時間がプライベートに及んでしまっていることに関しては、それほどストレスは感じていないんだけどね。そもそも多くの試合をプレーできるということはサッカー選手として冥利に尽きるわけで、やり甲斐もある。ただ、これまでのプロサッカー人生で、僕は特に身体のケアには気をつけてきたつもりだから、それがおざなりになった末に大きなケガをしてしまったら、すごく後悔してしまうんじゃないかという不安がある」

 

バンコク・ユナイテッドは第24節消化時点で11勝5分8敗の6位。リーグはすでに21勝3分の全勝でBGパトゥム・ユナイテッドが史上最速の優勝を決めた。しかし、プロサッカー選手である細貝にはシーズン終了まで全力で戦う義務があり、本人もその意欲を保ち続けている。

「前節のナコーンラーチャシーマー戦は累積警告で出場停止だったけど、その前までは6連戦全てに先発出場していた。リーグ戦もコンディションの関係でスタートから出なかった試合が1試合、1分も出ずに休んだ試合が1試合。他の試合は全てスタートからで出ている。この地でコンスタントに試合に出続けることは当たり前だし、自分のコンディションについても今のところは全く問題ない。あとはチームにどんな結果が付いてくるのか。どれだけ自分が中盤の底でチームのために頑張れるか。3月の残り6試合でどれだけ成績を上積みできるかはチームにとっても、僕個人にとっても大事なことだと思っている。今は1試合、1試合にフォーカスして臨んでいきたいと思う」

 

今季の細貝は所属元であるブリーラム・ユナイテッドからバンコク・ユナイテッドへ期限付き移籍したが、新型コロナウイルスでシーズンが変更になったタイミングで契約も切り替わり、今シーズン終了まで既にバンコク・ユナイテッドと新たな契約を結んでプレーしている。それでも来季の動向については様々な選択肢が生まれる可能性もあるが、それでも今の彼は一心不乱にバンコク・ユナイテッドに尽くす覚悟を決めている。

「今季はまだ4月にカップ戦の試合が残っているんだけども、まずはは3月末のリーグ戦終了でシーズンが終わるような状況。とにかく今は一歩一歩、1試合1試合、確実に前へ進んでいくしかないと強く思っている」

 

長く困難だった細貝とバンコク・ユナイテッドの今シーズンは、ついに最終盤を迎えた。