Column2021/12/21

【Column-089】「My home town-03」『2021シーズンを終えて』

 細貝萌の所属するザスパクサツ群馬はJ2リーグの最終節で大宮アルディージャに1-3で敗戦。その結果、年間42試合で争われたJ2で9勝14分19敗の勝ち点41となり、残留圏の18位でフィニッシュした。

 昨季から続くコロナ禍の影響で、今季2021シーズンのJ2は22クラブ中4クラブがJ3へ降格する厳しいレギュレーションとなった。その中で、群馬はシーズン序盤からなかなか勝ち星を積み上げられず、7月には奥野僚右監督を解任して久藤清一ヘッドコーチが後を引き継ぎ監督へ昇格し、ここまで戦ってきた。9月23日に群馬へ加入した細貝は残留争いを強いられるチームへと合流したわけで、相応の責任と結果を求められることになった。

 

「最終節の大宮戦は19位のSC相模原の試合結果も睨みながらのゲームでした。僕らも後半の途中くらいには相模原が0-2、0−3で負けているという情報を伝えられていた。ただ、それでも目の前の試合に注力しプレーしていたけども、その前の2試合に比べると、チーム全体として全く良いパフォーマンスを発揮できなかった。結果的には、相模原が勝利できなかったことで辛くもJ2に残留することができたけど、もうあんな試合は絶対にしてはけない」

 

 細貝は3月末に当時所属していたタイ・リーグ1のバンコク・ユナイテッドでの活動を終えてから群馬に加入する9月下旬まで、幾つかの事情でフリーの立場を続けていた。これだけの期間、サッカーから離れていたのはプロサッカー選手になってから初めてのことで、その結果、群馬加入後は心身のコンディションを整えるのにそれなりの時間を要してしまった。

「バンコク・Uとの契約を終えてから群馬に加入するまでの期間が長かった理由は実は幾つかの要因があるんですよね。まぁそれは自ら決めたことだったし、内容についてはまたいつかお話ししようと思ってる。とにかくザスパクサツ群馬の一員になってからの日々は僕にとってとても良い経験になったと思っています。このチームで僕が求められる点、責任、評価などは十分認識して加入したつもりだったし、僕が加入した当時の群馬はJ2で年間50勝ち点を目指していたけども、なかなか勝利を積み上げられずに苦しんでいた。結局最終的な勝ち点は41で、残留ラインぎりぎりに留まり、最低限の目標であるJ2残留を果たすことはできた、そして来季につなげることが出来た。その点に関してはポジティブに捉えています」

 

 群馬での初出場は11月3日の第37節・V・ファーレン長崎戦で、後半途中からの出場だった。その後も第38節・相模原戦、第39節・町田ゼルビア戦と途中出場が続き、満を持して先発の座を得たのは第40節のアルビレックス新潟戦だった。

「個人的には途中出場していた時期も『スタートから行ける』と思ってはいたんですよね。当然途中から出場するよりも先発できた方が圧倒的にプレーしやすいし、最初から自分の中でリズムを作ることが出来る。でも、それを決めるのは監督だし、僕はいつ使ってもらえるかと待っていました。初めてスタートから出た新潟戦では約8ヶ月ぶりのスタートだったけども、その中である程度自分らしさは出すことはできたのかなと思うし、何よりサポーターやファンの方々に自分存在を改めて知ってもらえた事が何よりも大きなことだった。この新潟戦、そして続く磐田戦は外からみると明らかに格上と言われるチームとの対戦で、最終節は残留を争う大宮と。いずれも厳しい戦いになるとは当然思っていたのでそこは個人的にも気にしていた部分の一つ。もちろんチームとしては勝ちたい。ただ、最低限ドローも見据えながら勝ち点を1つでも多く積み上げたいと思っていました。その中で、新潟戦と磐田戦はいずれもスコアレスドローで終え、初めてこのチームで長い時間プレーしたことで、このチームの課題を多く見つけることが出来た。そして僕もスタートから試合に出たことで、チームにおける自身の役割をはっきりと認識できたと思っていたし、それにこの2試合で今のこの僕らの状況ではどんな戦い方をすれば良いのかがある程度各々が把握できたことも収穫だったと思っていました。中でも間違いなく上位相手にはどのようにゲームを進めるべきかなどをチーム全体で理解できたと思ったんですよね。でも、、、最終節の大宮戦ではその経験を全く生かせなかった。相手もうまくいっている状況とは言えないチームだったのだけれども、この試合でチームがボロボロだったのは本当にショックだったし、試合後には『僕は何をしに群馬へ来たんだ。。。』と何度も自問自答する時間があった。『僕自身がもっとチームに、仲間に伝えられることはあったんじゃないか。もっと強く激しく言うべきだったのか』などなど。今のこのチームに足りないもの、向上しなければならないものを最終節でしっかり理解したし、各々が感じることがあったと思う。今は加入してからの今までの時間をとても充実したと言える。僕はこのチームでは間違いなく誰よりも自身の身体のケアには時間を使ってきたし、準備してきたと自信を持って言うこともできるから」

 

 

 J2に残留できた事実は大きく、細貝自身もその点は深く理解している。

「J3に降格して、また1年でJ2へ戻るのは当然簡単なことではない。もちろんクラブの資金の問題もあるし、J3の中にも将来的にJ1昇格を狙っているクラブも当然あるわけで、今回はJ2から4クラブが降格するレギュレーションだったわけだから、来季のJ3は一層厳しいリーグになるとも思うんですよね。その意味では、群馬としてはJ2に残留できたことはかなり大きなことだと思ってるし、これでまた間違いなく来季につなげることが出来た」

 

 今後もサッカー選手としての意欲は更に高まっている。

「クラブ、チーム、スポンサーの方々、そしてファンやサポーターから『細貝が群馬に来てくれて良かった』と言ってもらえるのが一番嬉しいことだし、加入し、実際にそう言ってもらったことが一番嬉しいことだった。プロサッカー選手のモチベーションはそういった人たちの思いによって支えられているし、その声援が力になり、未来を左右するとまで言える。だからもっともっと皆さんに認めてもらえるようにやらなきゃいけないと強く感じています』

 

 細貝の2021シーズンが終了した。彼はまだまだプロサッカー選手として、これからも戦い続ける。

(了)