Column2022/07/10

【Column-091】「My home town-05」『復帰への道程』

 

 3月6日のJ2リーグ第3節、ベガルタ仙台vsザスパクサツ群馬で負傷交代した細貝萌は、その後に左足関節脱臼骨折と診断されて2日後の8日に手術を行い、全治6か月と診断された。

「ボールを奪いに行ったときにスライディングした左足が芝に引っかかってしまって、脱臼骨折してしまいました。これまでの自分のサッカー人生の中では、最も症状の重いケガになってしまいました。その直後には足が元の方向に戻っていたので、なんとかプレーし続けようと思ったんですけど、足を地面に付けられる状態ではなく立ち上がることすら出来なかった」

 

今季の細貝は群馬の新指揮官に就任した大槻毅監督からチームキャプテンに任命され、故郷のクラブに全身全霊を注ぐ覚悟を備えていた。J2開幕からの2試合を1勝1分とした後の仙台戦は飛躍のきっかけを掴む重要なゲームとも捉えていたが、思いがけぬアクシデントに見舞われて長期戦線離脱を余儀なくされた。

「かなり複雑な思いを抱きながらのリハビリ期間になりました。ケガをしてしまったことに関してもかなり落ち込みましたけども、それよりも、本来ならばキャプテンとして先頭に立って皆を引っ張っていかなければならない立場なのに、それができないことが一番辛かった。それは入院していたときだけでなく、その後のリハビリ期間に移ってからもそうだったんです。今、チームが苦しい状況でなかなか良い成績を上げられないでいるのを見ると、よりその感情が高まってしまうんですよね。自分の責任は大きいと」

 

細貝自身は今季の大槻監督体制でのチーム作りに手応えを感じていたという。

「チームは間違いなく良くなっているという感触があった。でも、今は結果に結びついていない。でも選手たちは間違いなく成長していると思う。だからこそ、自分の力を注いでチームを少しでも支えたかった。ただ、それは今からでも十分できる時間があると信じている。そのために、今の僕は少しでも早く復帰することを目指しているんです」

 

辛く厳しいリハビリはしかし、本人の揺るがぬ意志でその期間を大幅に短縮させようとしている。

「ケガに関しては、かなり順調に回復しています。当初は全治まで6か月かかると言われていたし、復帰は9月中旬ぐらいだろうとの診断だった。でも手術から4か月経った今の時点ではかなり順調だと思う。その点はドクターやトレーナーも認識してくれていて、今はできるだけ早くピッチへ戻りたいと思っています。ただ、身体に不自由がなく日常生活を送れていますけども、サッカー選手としてプレーした場合の強度に関しては別の観点があるので、その点は慎重に見極めて復帰までの過程を歩みたいと思っている。ピッチに戻ったときにどれだけチームの力になれるかだと思うので」

 

もちろん本人には焦りもある。少しでも早くチームに加わりたいと思うからこそ、リハビリ強度を高めてオーバーワークしてしまうこともある。36歳になった彼にとって、身体を酷使することは現役生活の終焉を早めてしまうリスクにも繋がる。それでも、苦境に立つ群馬を救いたい一心で早期の復帰を目指す。

「外からチームを観ていて、復帰した自分がどんな役割を担えるかというよりも、単純にピッチに立つことで周囲に影響力を与えることが出来れば嬉しい。僕は決してうまい選手ではないから。でも僕はキャプテンですから。これまでチームに貢献できなかった分、復帰してからはリーダーとしてこのチームを支えたい。今のザスパは下位にいますけども、他チームとの勝ち点差を考えれば、まだまだその順位は挽回可能だと思っている。

今の群馬には土台が必要なんです。そのためには大槻監督の力が必要で、選手はそれを信じて戦い続けなければならない。僕はそう思っているので、これから緩やかにでも右肩上がりで成績を上げるための努力をしたい。この時期を耐えながら成長することで未来への道筋を見出せるはず。それはチームも、そして僕自身も」

 

様々な国でプレーしてきた細貝には残留争いの経験もある。

「ドイツではアウクスブルク在籍時代に残留争いをして、しっかり1部に残った経験がある。一方で、レイソルに在籍したときは残念ながらJ2に降格してしまって、しかも僕自身は出場機会を全く得られないことが多くチームに貢献できなかった無念さが今でもあるんです。今季のザスパでは、そのときと同じ轍を踏みたくない。その思いもあるから、本当に早く復帰して、チームの一員に再び加わりたい」

 

急ピッチで復活への道のりを進む。その勇姿を見られるまで、あともう少し。その時が近づいている。