Column2020/03/3
バンコク・ユナイテッドはタイリーグ第4節で昨季リーグチャンピオンのチェンライ・ユナイテッドと対戦して4-1で勝利した。これでチームは開幕から無傷の4連勝。細貝萌はターンオーバーで途中出場した第3節のサムットプラーカーンFC戦以外の3試合でフル出場し、チェンライ・U戦ではタイ移籍後初ゴールをマークした。
「ゴールは良い場所にいたから取れた。ゴールに関しては正直言って別に自分じゃなくても、誰かがゴールして勝てればいいんだよね。それでも80分過ぎまで1-1の状況で、自分が決めて2-1とリードできたのはかなり大きなことだった」
この結果により、バンコク・Uはリーグ戦で首位を堅持した。また試合内容に関しても、細貝自身は手応えを掴み始めているという。
「4試合やって勝ち点12。チーム内はかなり雰囲気が良いと思う。以前のコラムでも触れたけども、自分は今、ボランチのポジションでありながらも試合の流れの中でセンターバックのような役割も課せられている。その『ボランチ兼センターバック』というポジションが今は自分に一番合っていると感じる」
昨季のバンコク・Uはリーグナンバー1の得点数を誇りながら、失点の多さで勝ち星を逃していた。今季はその守備の問題を、細貝を獲得(ブリーラム・ユナイテッドからのレンタル)することで解消した形だ。
「昨年もそうだったけども、今は自分が信頼されていると感じる。去年のブリーラムでもコンスタントに試合出場できていたので充実していたけれども、今は(アレシャンドレ・)ペルキンク監督と今までにないぐらい良好にコミュニケーションが取れていて、よりプレーに専念できている。自分に与えられている役割がとてもはっきりしているんだよね。例えばサムットプラーカーン戦は先発では出なかったんだけど、これは7日で3試合というハードな日程だったのが理由だった。実際にその前の試合からは6人が入れ替わった。それも事前に監督から、『次のチェンライ戦に備えさせたいから』としっかり説明してくれた。ただ、サムットプラーカーン戦の後半に自分たちのチームがリードしていたら『途中出場させる』とも言われていて、実際に2-1になった瞬間にピッチへ立った。監督とは『2点差、3点差の状況だったら試合に出ることはない』とも話していたけどね。それは中2日で戦うチェンライ戦に備える為にも。僕はもう、若くないから(笑)。試合前からいろいろなことを話す中でしっかりと監督の思いを感じることができたし、僕も監督に対して『ターンオーバーするのは今後の若い選手たちにとっても良いことだ』と伝えたよ。そして何より、多くの選手が入れ替わった試合でチームが勝ち点3を取れたことが大きかった。今は監督、チームが自身のことを大切にしてくれる。だからこそ自分の役割に邁進できていると思う」
ただ、バンコク・Uはまだまだ気の抜けないポジションにいる。次節の対戦相手はバンコク・Uと同じく開幕から4連勝を達成して得失点差で2位につけるラチャブリーFCだ。しかも、このラチャブリー戦からは再び中3日、中3日の連戦が続く。また、新型コロナウイルスの発生はタイ国内にも深刻な影響を及ぼしており、今後の大規模イベント開催についても不確定要素が増えている。タイリーグでは3月の無観客試合が決まり、今後は試合延期やスケジュール変更の可能性もあり、チーム及び選手はその中でコンディションを維持しなければならない。
それでも、今の細貝には充実感が漂っている。
「今季のバンコク・Uはシーズン開幕後にチームのエースストライカーがケガをしてしまった影響で急遽ブラジル人FWを獲得したけども、それ以外の新戦力は僕ひとりだった。残りの選手は全て昨季のリーグで4位に入ったメンバーだから、僕が加わったことでチーム成績が向上していくのならば、これほどやり甲斐のあることはない。自分としては、まずは守備の選手として失点しないように努力していく。失点しなければ少なくとも敗戦することはないわけだからね。そして、今はとにかく行けるだけいきたい。リーグでアドバンテージを握りたいね。その結果、シーズンの最後に頂点へ立てるように、頑張っていきたいと思う。今年の僕は、今まで以上にやらなきゃいけない理由がある」
これから盛夏を迎えようとしている灼熱のタイで、細貝は自らの存在意義を着実に見出している。
(了)
Column2020/02/20
2020シーズンのタイリーグが開幕。
今季から細貝萌が所属するバンコク・ユナイテッドはホームでの開幕戦でプラチュワップFCを2-0で下した。
「今季公式戦初戦でスタメンフル出場できた。僕に任されたポジションはボランチだけど、味方がボール保持しているときは自分が最後尾に下がってセンターバックのような役割へと移行する。特に攻撃的に試合をコントロールしてパス回ししているときは、僕は味方センターバックよりもポジションを下げてプレーする機会が多くなる感じなんだよね。また今回の対戦相手がカウンターを主体とするチームスタイルだったので、僕は味方守備陣と共に逆襲を受けた際に備えて守備ブロックを形成するようなシーンが多かったね。そのプレー感覚は良かったし、良い流れでゲームを進められたように思う。チームとしての後半の戦い方はまだまだだったけどね」
チーム最年長で、日本、ドイツ、トルコなどでのプレー経験が豊富な細貝にはチームリーダー的な役回りも求められている。攻撃面は若く血気盛んな選手に任せ、自らはゲーム状況を鑑みて全体のバランスを取る。ポジションは中盤の底だが、ときに最終ラインまで降りてディフェンスの舵取りを行う。それがバンコク・Uで細貝が担う、新たなタスクとなる。
「次からは連戦なので、僕の役割がずっと同じになるかは分からない。今回はレギュラーのセンターバックが負傷欠場している影響もあって、後半途中からはセンターバックとしてプレーしていた。もちろん自分ではセンターバックでも問題なくプレーできると思っているけども、味方が復帰したら純粋なMFとしてプレーする可能性もあるし、個人的にはどこでも問題ないと思っている」
長くプロサッカー人生を過ごす細貝は、シーズン最初のゲームを勝利で飾れた意味をよく知っている。
「間違いなくリーグ戦の初戦で勝利できたことは大きいよ。ドイツでプレーしていたときはDFBポカール(カップ戦)がシーズンの公式戦初戦になるケースが多かったけど、今季のタイではリーグ戦が初戦。シーズンを通してタイトルを争うリーグの開幕戦で勝利できたのは今後への弾みになるよね。リーグの初戦を良い試合内容、良い結果で終われなかったら精神的にキツイものがあるから、最初のゲームで勝ち点3を得られたのは本当に大きい。とは言え、次の3連戦はもっと重要になると思っている」
昨季2019シーズンのバンコク・Uは優勝したチェンライ・ユナイテッド、そしてブリーラム・ユナイテッド、タイ・ポートに次ぐ4位の成績だった。この上位3チームは2020シーズンの開幕戦で三者三様の結果となった。タイ・ポートは開幕戦を4-1で制して得失点差で首位に立ったが、チェンライ・Uは今季就任した石井正忠監督率いるサムットプラカーン・シティFCと引き分け、ブリーラムはBECテロ・ササーナに苦杯を喫して出遅れたのだ。タイ・ポートに次ぎ2位に立ったバンコク・Uとしては、その座を維持して頂点への足掛かりを築かねばならない。
「次は同じバンコクを本拠地とするムアントン・ユナイテッド、そして次は石井監督のサムットプラカーン、そして第4節はチェンライと、中2日、中2日でゲームが続くから、ここを乗り切らないと。バンコク・Uのタマサートスタジアムは25,000人収容でタイのクラブとしては大きい方だから、開幕戦のゲームですらかなり空席が目立った。バンコク・Uは首都のチームなのだから、もっと観客に来てもらえるように選手は頑張らなきゃならない。結果が付いてくれば当然サポーターもスタジアムへ来てくれると思うので、努力していきたいと思う」
2020シーズンの細貝はここ数年来で最も良いコンディションを維持してシーズンをスタートできた。本人に聞くと、シーズンの公式戦初戦で先発したのは2016−2017シーズンに在籍したドイツ・ブンデスリーガ2部のシュトゥットガルトでザンクトパウリに2-1で勝利した際にフル出場したとき以来だと言う。
「確かに、言われてみれば、シーズン最初の試合に出場できたのは、シュトゥットガルトのとき以来だね(笑)。その意味では、今季は良い形でシーズンの開幕を迎えられたかもしれない」
プラチュアップFC戦でマン・オブ・ザ・マッチに輝き、第1節のリーグ・ベストイレブン、新聞紙面のベストイレブンにも選出された細貝は、勝負となるタイでの2年目で、チームと共に絶好のスタートを切った。
(了)
Column2020/02/6
今季、ブリーラム・ユナイテッドからバンコク・ユナイテッドへレンタル移籍した細貝萌は、チームが実施していた今年1月のタイ国内でのチョンブリキャンプ終盤、そしてマレーシアキャンプの辺りから体調を崩しながらのプレーを強いられていた。
しかし、その後は順調に回復し、2月1日には中国1部のクラブとのトレーニングマッチに出場して完全復帰を果たした。
「このチームへ加入してから初めて、90分間のゲームをプレーしたよ。それまでは熱が出たり咳き込むことがあって体調不良に悩まされていたんだけども、もう大丈夫。まあ、まだ運動をすると耳鳴りがすることがあるけどもね」
バンコク・ユナイテッドで細貝が任されるポジションは、どうやらボランチのようだ。しかも、多くの時間で、守備に注力した役回りを与えられそうだと言う。
「このチームは今4バックなんだけども、まずはサイドバックが前方へ上がる。そしてセンターバックが横へ広がって、僕が後方へ降りる形になることも増えると思う。相手のカウンターを受けたときは僕が中盤の位置で構えるのではなくて、リベロ的なポジションを取って最後尾で迎え撃つ感じかな。相手FWへのアタックも僕じゃなくてセンターバックがファーストアプローチして、僕は後ろでカバーする形になるパターンも時間が経つにつれて増えると思う。特にチーム戦術が機能して味方が良い形で攻撃しているときは、この役回りになっていることが多くなるだろうね」
いわば『偽リベロ』のような役割だが、守備面においてはかなり重要な責務を負うことになりそうだ。
「ボランチでプレーしているときのように相手へガッツリといってファウルで止めるだけじゃなく、状況によってプレー判断しなきゃいけないと思う。自陣後方ででプレーする機会も多くなると思うからね」
今季のタイリーグ1の開幕は2月15日。昨年の12月初旬にチームが始動してプレシーズンが約1か月半以上経過したが、まだ公式戦初戦までは約10日間ほどある。
「これまで僕がプレーしたJリーグやドイツ・ブンデスリーガ、トルコ・スュペル・リグなどのクラブと比べるとかなり長いプレシーズン期間を過ごしているけど、このペースでやるんだなということが分かれば、何の問題もない。これもここにいるからこそわかる新たな経験だからね。それに、長くプレシーズンを過ごすことで、チームメイトのこともよく知ることができた。各々の選手の個性や性格なども理解したし、何より、そのプレーの質については思っていた以上に高いのではないかと思っている。もちろん本番の試合になれば、またプレー内容も変わってくるんだろうけども、今のところはとても良い印象を抱いている」
家族も細貝がマレーシアでのキャンプを終えたのとほぼ時を同じくしてバンコク入りし、タイでの生活が再び始まった。田舎町のブリーラムから大都会のバンコクと、その街の様相は異なるが、今のところは順調に生活環境が整い始めている。
「今は娘の幼稚園がほぼほぼ決まった状況かな。今日の気温は33度で、タイはこれからどんどん暑くなっていくけど、この気候にはもう慣れてるから大丈夫。ただ、最近のバンコクは空気が悪いんだよね。ブリーラムの時もそうだったけど、バンコクは交通量も激しいし、大気汚染の問題があるんだなと改めて実感している。今はそれが悩みかな。家族がいるからね」
新たなるチームで臨む2020シーズンのスタートはもうまもなく。細貝はすでに、臨戦態勢に入っている。
(了)
Column2020/01/6
タイリーグの始動は早い。
リーグの開幕は通年2月の中旬だが、各チームは年が明ける前の12月には集合してトレーニングがスタートする。
この度、ブリーラム・ユナイテッドからレンタル移籍の形でバンコクユナイテッドへ移籍した細貝萌も当然早期に始動した。
「まず皆様、『明けましておめでとうございます! 本年もどうぞ宜しくお願い致します!』。ただ、僕はもう今シーズンをスタートさせています(笑) でも年末は一度オフになったので日本へ帰国し、年末年始の4日間を日本で過ごして、年が明けた1月2日にバンコクへ戻りました」
例えば会社員は異動や赴任によって生活環境が変わる。それはプロサッカー選手も同じだ。
細貝の場合は日本からドイツ、その後はトルコ、そしてタイと、様々な国へ渡り、様々な場でサッカーをプレーしてきた。果たして今回の移籍に関しては、どんな環境の変化があったのだろうか。
「ブリーラムはタイ東北部の田舎町。本当に田舎なんですよ(笑)。だから街の人々も穏やかだし、時間がゆったりと流れているイメージ。でもバンコクはタイの首都で、東京と同じく大都会。それと以前のコラムでも触れたけど、バンコクは道路事情が複雑で、時間帯によってはひどい交通渋滞が起こる。バイクの数もかなり多いし、車を運転するのは少なからずリスクがあるんだよね。だから今回、バンコクで暮らすうえでは自分で運転をするのはやめて、現地のドライバーを雇っている。バンコク・ユナイテッドのトレーニング施設は市内中心部から車で最低でも約1時間くらい掛かるんだけど、その行き来も全てドライバーにお願いしている」
バンコクには日本の各企業から赴任してきた方も多く、日本人同士が交流する機会も多々ある。バンコク市内には日本人街があり、そこには日本食専門のスーパーマーケットやレストランも数多くあるから非常に便利だ。
「僕ら家族がバンコクで住む家はとにかく立地が良いところにしたよ。妻や子どもにとってはそれが一番安心。まぁ今までもドイツの各都市や、トルコのブルサっていうイスタンブールから離れた街にも住んだことがあるし、どんなところでも基本的には何も問題ないんだけどね(笑)」
サッカーの話に戻すと、バンコク・Uはすでにチームの活動が始まっているが、今はようやく代表選手たちが合流したところでもある。バンコク・Uにはタイやフィリピンなどの代表選手などがおり、彼らは年末年始に掛けてワールドカップ予選やアジア地域の各大会へ出場したため、チームへの合流が遅れていた。
「そうなんです。だから、まだチーム全員で練習がそこまでできていないから、本格的な戦術面でのトレーニングはもう少し先のことになるんじゃないかな。また、僕もまだチームメイト全員の名前を覚えられていない。タイの人の名前は難しいから(笑)。でも、日々一緒にトレーニングしていることで、『この選手はこんな性格なんだ』とか、『彼はこのようなプレーを得意としてるんだ』とか、いろいろなことを学んでいるよ。自分自身のプレー感覚もだんだん掴めてきて、このバンコク・Uというチームの特徴が分かり始めている」
バンコク・Uはタイリーグで優勝を争うだけの戦力が揃うチームだが、それでもリーグタイトルは2006シーズンに成し遂げて以降は遠ざかっている。
「このバンコク・Uで当然タイトルを獲りたいと思っている。でも、各クラブ間のレベルや所属選手の能力は別にして、昨年在籍したブリーラムに比べると、バンコク・Uはまだ全体的に差があるように感じる。様々なファクターを突き詰めて、その差を埋めないと目標を達成するのは困難だとも思っている。ブリーラムにはタイ代表でも主力を張る選手が多かったし、外国人選手も含めてチーム全体の総合力が高い。Jリーグでも優勝を争うクラブと中位以下に留まるクラブとで格差が生まれているように、タイリーグでも明確にその序列が定まっている」
それでも、今の細貝には高いモチベーションがある。今年、2020年に34歳となる彼は、心に期するものがあるらしい。
「2020年、当然、僕自身はベストを尽くす。それと、今季は節目のシーズンになるのかなと思っている。どうやら僕は、このバンコク・Uではチーム最年長になるらしいね。チームで一番歳上という環境はプロ生活の中でも初めてのこと。そうなれば、僕はチーム内で最年長なりの振る舞いをしなければならない。それを聞いたときに、今シーズンは何かの節目なのかなと。でも全く嫌な感じはしないですよ。むしろバンコク・Uは今回、チーム最年長になる僕を獲得してくれたわけですよね。最年長、しかも外国人選手。普通はそんな選手を獲るのにはリスクがあるじゃないですか。もし日本だったら、チームで最年長になる外国人選手は獲ってこないでしょ? 僕はストライカーでもないわけだし。それでもバンコク・Uは僕を獲得してくれた。それだけ評価してもらっていると思うし、それを自覚している今、僕のモチベーションは非常に高いですよ」
2020年、細貝萌の新たな挑戦が始まる。
了